福井貴代美さん――早稲田大学日本語教育研究センター契約講師

研究内容紹介

2. 「私の契約講師体験――音声指導に関わって」

早いもので,修士課程を終え,契約講師を始めてから,もう1年3ヶ月あまりになる。3期目もそろそろ終わりに近づこうとしている。日本語教育に携わって15年目になるが,コースとしての発音クラスを担当させていただく機会を得たのは,ここ早稲田大学が初めてであった。これまでの教育現場では,音声指導の遅れとその必要性を感じながらも,決められたカリキュラムの枠の中で,なかなか実践の機会を得ることができないというのが実情であった。そんな中で音声指導の機会を広げ,学習者の発音に関する意識を高めたいというのが,私の中での,日本語教師としての課題の1つとなっていた。

早稲田大学で行われているようなコースを通しての「発音指導」というのは,ほかにはあまり見られない。非常に特徴的なクラスであると言ってよいだろう。現在,私が担当しているのは,学部生や大学院生などの上級レベルの学習者を対象に,主にプロソディーに関わる指導を行うクラスである。所属や専攻はさまざまな学習者たちが集まってきているクラスであるが,非常に高い学習意欲を持って取り組んでいる者が多い。もちろん人によって,その伸び方には,はやい,遅いの差はあるものの,コースのはじめから比べると,確実にアクセントを聞く力,それを意識した発音力が育ってきていることが感じられる。文法などの学習と違って,すぐにはっきりとした結果が出るものではないだけに,ともすると,学習者に焦りや,不安も生まれかねない。そんな中で,学習者の学習意欲を維持し,個々にそれなりの達成感を持たせながら,明るく,楽しくクラスを進めることを心がけている。日々,私自身も勉強である。回数を重ねるごとに,学習者とともに,教師としての私自身の耳も育ってきているように思う。学習者の発音のアクセント核が置かれている位置を瞬時に判断して真似,正しいものとの違いを示すことなどはもちろんだが,最近はピッチの幅なども敏感に感じられるようになってきた。

現在は,日本語センターの中川千恵子先生の作成によるテキストを使い,アクセントやイントネーションに関する知識を与えるとともに,練習文や学習者自身の書いた文などを用いて指導を行っている。ピッチカーブという視覚的マークを施す作業を習慣づけることで,自立学習へと結びつけることが1つの目標となっている。今後は,チャンスがあれば,さらに,より豊かな表現力を伴う話し方や発表などができるようになることを目指した指導にも取り組んでいけたら・・と考えている。

ずっと自身の日本語教師としての課題であった音声指導に取り組む機会を与えられていることを,今,とても幸せなことだと感謝している。現在の担当クラス(E:28人・F:18人)は,人数が非常に多く,正直なところ,発音クラスとしては厳しい条件が多いと言ってよい。教室外での作業の負担も大きい。しかし,私にとって日々の教室での時間は,ある意味,とても充実した楽しい時間でもあり,自身の教師としての成長にもつながるものと信じている。せっかく与えられたこの音声指導の機会を大切に,今後の課題に向けて,新たな指導展開を検討していきたいと思うところだ。[2006年7月]

1. 「音声指導の普及にむけて」

ついこの前,修了式を終えたばかりのような気がしていますが,早いもので,あれからまた1学期が過ぎようとしています。現在は,早稲田大学日本語教育研究センターで契約講師をしております。修士論文のタイトルは,「日本語学習者に対する韻律指導-複合語・句のアクセントを中心に-」ということで,主に,韻律指導の重要性とその効果について確かめ,日本語教育の現場における音声指導の実情とあり方なども考えました。現在も,早稲田で発音指導を担当させていただいているわけですが,自身の研究でも扱ったように韻律に関する知識を与え,練習を繰り返すことで,確実に学習者の意識化が進み,発音に変化が現れることを身をもって感じている毎日です。履修希望者の多さからも音声指導に対する学習者のニーズが高いことがうかがわれますが,早稲田のように発音指導という授業が設けられていることは,教師にとっても,学習者にとっても幸せなことだと言えると思います。今後,より多くのさまざまな現場で音声指導がもっと一般的なものとなっていくことが,今の私の願いであり,そのために,どうしたらよいのかを考えていくことが,今後のテーマの一つと言えるでしょう。

仕事と研究活動の両立

修了から,数ヶ月。研究発表などの活動は,先日7月9日に行われた,第3回「日本語教育と音声」研究会における発表「プロソディー指導の一案―複合語のアクセントを例として」が初めてのものとなりました。仕事と研究活動を両立させていくことは,なかなか大変なことも多いです。皆さんのように大学院生という立場にある今こそ,研究に力を注げる貴重な時期であると思います。修士課程の2年間は,本当にあっという間に過ぎてしまいます。1日1日を大切に,充実した大学院生活を過ごしてください。私の頃と比べて,今は研究室の人数も増え,ゼミ活動も活発に行われている様子が伝わってきます。皆さんのそうした活動をうらやましく思うと同時に,「私もがんばらなければ・・」と励みにもなっています。最後になりましたが,今後の音声研のますますの発展と,皆さまのご活躍を心からお祈りしています。[2005.8.5]