著書紹介

『ピア・ラーニング入門 ― 創造的な学びのデザインのために』

表紙『ピア・ラーニング入門 ― 創造的な学びのデザインのために』

「実践から生まれた理論 ― 『ピア・ラーニング入門』出版で想うこと」舘岡洋子

『ピア・ラーニング入門 ― 創造的な学びのデザインのために』が出版された。

本書は池田玲子さんとの共著だが,ふたりでこの本の具体的な章立てを決めたのは2005年の秋,金沢の学会大会のときの帰りの飛行機の中でのことである。構想を練ったのはそれより前だから,ずいぶん時間が経ってしまった。共著というのは,私にとって楽しい体験だった。モノを書くこと自体は苦しい作業の面もあるのだが,ふたりで創るというのはそのプロセスでさまざまな発見や創発がおきて,ひとりでは味わえない醍醐味があった。

池田さんとは,それ以前にもいっしょに講演やワークショップをしているので,私自身ピア・レスポンスについてよくわかっていると思っていたのだが,私の担当のピア・リーディングとは同じ協働といってもずいぶん違っているとわかった。はじめはそれが,書くか読むかという技能の違いからくるものだと思っていたが,二人の関心や性向の違いもおおいに関係していたような気がする。これは私だけが思っていることなのかどうか,今度,池田さんにも確認してみたいと思っている。

もうひとつ,今,感じていることは,この本を書く過程は自分にとってのいい振り返りの機会となったということだ。こう言葉にすると,なんだかありきたりの言葉だが。私が担当した第3章と第5章は理論的な部分と実践的な部分という対応になる。その両方を書くことをとおして,自分の実践をやや客観的に眺めたり,その意義を考えたり,自分がめざす「教室観」について問うたりした。その行ったり来たりは,自分にとっての日常そのままを正直に語ることでもあったので,自分の居場所や現在を確認する作業ともなった。

自分が毎日,試行錯誤しながら積み重ねている授業実践について,内省的に検討し自分の気づきを言葉にしてみる。これでいいか,いやちょっと違うという問い直しの繰り返しの中で,自分が求めているものを探し当てようとする。これは,毎日追われて流されてしまいがちな中で,普段なかなかできない試みだ。少し形になってきた気づきと前に考えていたこととのつながりを考える。こうしてあるコンセプトを生み出す。このコンセプトは,自分なりの「理論」だ。実践から生まれた理論といってもいい。普遍的などんな場合にも適用できるものではないのだが,自分の体験から出てきた自分自身が納得できるものであるということが大変重要だと私は思っている。もちろん先行研究も読んだりするのだが,あくまでもそれは自分の「理論」を確認したり,位置づけたりするためのような気がする。

新たなる自分なりの理論は,次の実践を意識的に「見る目」となる。

メールマガジン「ルビュ言語文化教育」213(2007年6月29日)より転載)

内容紹介(ひつじ書房による)

ピアとは仲間,同僚(peer)という意味の言葉。ピア・ラーニングとは,近年,さまざまな分野で耳にするようになっている「協働」という理念に基づく学習活動方法のこと。本書では,まず,理論編として,市民運動,地域,学校など,さまざまな分野で具現化された協働の形を紹介,また日本語教育における協働の再定義を行うとともに,日本語教師がピア・ラーニングをデザインする場合に重要となってくる学習としての効果,特徴について整理する。さらに実践編として,ピア・レスポンス,ピア・リーディングの具体的な学習活動の例について紹介,解説を行う。

本の装幀は,演劇の宣伝美術で活躍されている高橋歩さんです。高橋歩さんが,演劇フライヤーをデザインしている劇団は,ナイロン100℃,グリング,双数姉妹など。

もくじ

  • 第1章 協働とは(協働の定義;市民協働の原点 ほか)
  • 第2章 さまざまな協働の学び(対話的問題提起学習;シナゴジー理論による相教学習 ほか)
  • 第3章 ピア・ラーニングとは(学習観の転換と協働の背景;ピア・ラーニング ほか)
  • 第4章 ピア・レスポンス(ピア・レスポンスとは;協働学習としてのピア・レスポンス ほか)
  • 第5章 ピア・リーディング(読解授業の問題点;ピア・リーディングのはじまり ― なぜピア・リーディングなのか ほか)

『ひとりで読むことからピア・リーディングへ ― 日本語学習者の読解過程と対話的協働学習』

表紙『ひとりで読むことからピア・リーディングへ ― 日本語学習者の読解過程と対話的協働学習』
  • 舘岡洋子 著
  • 2005年,東海大学出版会.
  • ISBN:978-4486016663,201ページ,¥2,940(税込)
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本書の内容(東海大学出版会による)

著者が日本語教育の実践現場で感じていた「読解教育のあり方」について,日本語学習者が読解の際にたどる過程での問題を明らかにし,自ら提唱するピア・リーディングを取り入れた成果と考察をもとに,読解授業における新たな提案を試みる。

もくじ

  • 序章 問題提起(読むことの難しさとは;読み手は読みの過程で何をしているのか;読解授業に関する疑問)
  • 第1章 読むこととは(読解過程のモデル;スキーマ理論による読解研究 ほか)
  • 第2章 日本語学習者はどのように読んでいるか ― 日本語学習者の読解過程(読みの過程を知ること;日本語学習者の読解過程および優れた読み手の特徴;内部リソースおよび外部リソースの利用と知識獲得;読解過程における自問自答と問題解決方略)
  • 第3章 ピア・リーディング ― 協働的読解活動の提案と試み(ピア・リーディングの提案;ピア・リーディングの試み;ピア・リーディングの実践 ― 読解授業における協働的学習)
  • 終章 読解授業におけるピア・リーディングの意義と可能性(ピア・リーディングの特徴;ピア・リーディングにおける仲間の学習者 ほか)

書評