書評

舘岡洋子(2005).『ひとりで読むことからピア・リーディングへ ― 日本語学習者の読解過程と対話的協働学習』東海大学出版会.

本書は,学習者同士が助け合いながら対話的に問題解決を行い,テキストを理解していく読みの活動を「ピア・リーディング」と呼び,読解授業におけるピア・リーディングの意義と可能性について検討したものである。

まず,著者は,読むこととはどういうことなのか,主に認知心理学における「読み」のとらえ方について,母語での読解研究,英語教育を中心とする第二言語教育,日本語教育における読解研究の先行研究をもとに検討を行っている。さらに,こうした先行研究を踏まえ,日本語学習者がどのように読んでいるのかについて,プロトコル分析を行い,日本語学習者の読みの過程を明らかにした。またその際に,優れた読み手の特徴についても具体的に示している。

後半部分では,著者自身が実際に行っているピア・リーディングの授業実践をもとに,ピア・リーディングの可能性を具体的にまとめ,その際の多様な実践例が紹介されている点で日本語教育における「読み」の学習を考えるうえで重要な書の一つであると言える。しかしながら,協働で行う読みの学習における課題については,具体的に明らかにされていない部分もあり,さらに著者の研究が待たれる。

本書は,年少者を特に対象としたものではないが,日本語を第一言語としない子どもたちが多くの時間を過ごす学校生活の中で「読む」力を考えた場合,他者とのかかわりを通して学ぶ協働的学習の視点は重要であり,本書はこうした点で,必読の書であると言える。 (籔本容子