日本語教育実践研究 (5)

期末レポート(2010年春学期受講生)

1.三つの目標に関して

目標3:学習者と仲良くなる

目標3に関しては,実践(5)のはじめに目標3を設定した際にも,先生からご指摘いただいたが,「仲良くなる」と言っても,具体的にはどのような状態なのだろうかという点から考える必要がある。確かに,考えてみれば,「仲良くなる」という言い方はとても曖昧で,漠然としていて,どこからどこまでが「仲良く」,どこからどこまでが「仲良くない」という基準も決まっておらず,「仲が良い」と「仲が良くない」との間にラインを引くことはできないかもしれない。例えば,一人の中国人学習者に頼まれて,週に一回日本語の練習(教室外)を行うことになっている。彼女といろいろ話ができ,悩みまで話し合えるようになり,自然に親しみを感じてきた。しかし,私たち二人は「仲良くなった」と言えるのか。もし言えるのなら,クラスの何人以上とこのように話ができたら,本当に学習者と仲良くなったと言えるのだろうかと考えると,目標3が達成できた,達成できなかったと安易に言いづらいのである。

しかし,目標3を書いているときに,頭の中に浮かべるクラスは「楽しく,教師と学習者,学習者と学習者が隔たりなく話せる」という状態のクラスであった。今になっても,そのようなクラス環境を目指していることは変わらない。具体的にどのような状態かというと,もちろん,「友達のように話せる」ということも,「結果として,教師と学習者,学習者と学習者が友達になった」ということも可能である。しかし,「友達になる」ために,教師が授業を行い,学習者が授業を受けるわけではなく,そのような教師と学習者の関係を目指しているわけでもない。私が考えたキーワードは「会話」と「やり取り」である。教師側として,ただ一方的に教えるのではなく,質問や自分の考え,気持ちを学習者に投げかけて,やり取りの中で授業を進めていく。学習者側も,例えば,授業の最後に行う全体共有で今日学んだ表現などを発表する。クラスメートの発表を聞いて,分からない状況,単語や文型を黙って問題視しないのではなく,発表者,或いは先生や他のクラスメートに質問する。質問と説明のくりかえしの中で,分からないことが分かるようになる。説明する側も,相手が分かるように説明できたかによって,自分自身が本当に理解したかどうかをチェックしながら,理解を深めていくことができる。このような,自由なやり取りの中で,教師にとっても,学習者にとっても,何かの学びになるのではないかと思っている。

実際に,この授業はたまご先生と学習者が「1対1」で進行してきたので,一人ひとりの学習者と詳しく話ができ,「この学習者は隣に住んでいる人と友達になりたい」,「この学習者はボートクラブで日本語を話したい」と各学習者の状況をよく知っている。後半になって,ペアでの活動であっても,分からないことがあれば,隣のたまご先生や学習者と話し合ったりする風景もよく見られた。特に最後の発表(2)の時間に,学習者たちと先生たちが自由に話し合ったり,質問し合ったりして,お互いに一言コメントや感想も書いた。このような活発な教室活動と雰囲気は私が目標3で考えた「楽しく,教師と学習者,学習者と学習者が隔たりなく話せる」というクラス環境に近いのではないかと考えている。

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