日本語教育実践研究 (5)

期末レポート(2010年春学期受講生)

1.三つの目標に関して

目標2:一人ひとりの学習者にとって「+1」になる活動を組み立て,実践する。

前期履修した実践研究でも一人で教案を書いたが,毎週どんな内容を学習項目に挙げるか,どんな活動で授業を進行していくか,グループ活動の場合は,どんなメンバー構成なのかが設定された状態で担当していた。更に,一人で教壇に立つことがなかったので,授業を進行させていくこと,クラスを管理することが私の責任だとそれほど強く感じなかった。しかし,今回の実践(5)は教科書もなく,授業の形式も決まっておらず,その上一人で一回の授業の90分間をコントロールしなければならないので,とても苦労した。

私が一人で担当したのは11週目の授業で,前のたまご先生(この実践研究(5)を履修している実習生のこと)の教案と授業の様子を見てきたので,自分もできるだろうと思っていたら,実際教師として授業を担当してみると,やはり難しかった。教案を書くとき,「学習者はたまご先生とペアを組んだほうがいいのか,グループ活動のほうがいいのか,それとも,最初はペアで,後はグループにするのか。」,「授業の最後は共有の時間を設けたほうがいいのか,それとも共有時間を設けずに,最後までグループ活動なのか。」とつい活動形式が授業目的に先行してしまう。しかし,一番重要なのは「なぜ『1対1』なのか,なぜ『グループ活動』なのか,一つ一つの活動の目的は何なのか。」,そして,「各活動の目的が学習者にとって『+1』になるという大きな目的に合致しているのか。」ということである。

例えば,日常生活ではあまり困ったことがなく,「困ったのはどんなシチュエーションなのか。」と聞かれても,思い出せず,「+1」にならない学習者がいる。その学習者に自分の言語生活をメタ的に認識させるために,どんな活動がふさわしいのかと考えた。最初はたまご先生が学習者と1対1で「どのような状況で,何を話したいのか」を学習者から引き出すのが一番いいと考えた。しかし,他の日本語の授業では,教師が1人の場合が多く,常に8人のたまご先生が側にいるわけではない。そこで,学習者同士での話し合いを通して「こんな状況もあるんだ。」と気づかせ,或いはクラスメートからの質問に答えられなかった時点で「私にはまだ話せないことがいっぱいあるんだ。」と気づかせるために,「グループ活動の形を取るほうが学習者にとって『+1』になる」という結論にたどり着いた。「方法論→目的」ではなく「目的→方法論」,つまり,まず授業の目的があって,その目的を達成するために,この活動形式を取るという順番であるべきだと実践研究(5)が教えてくれた。

また,すでに指摘されたように,今回はたまたま9人のたまご先生がいるので,クラスで学習者1人とたまご先生1人でペアになる活動ができたが,一人だけで教師として教壇に立って,クラスをコントロールするとき,どのように授業を組み立てるか,学習者一人ひとりにとって「+1」になるように,どのような仕掛けを考え,対応していくかについては今後の課題として考えていかなければならないことである。

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