『ジャーナル「移動する子どもたち」――ことばの教育を創発する』では,研究論文等の募集をしています。
詳しくは投稿規程および執筆要領を,バックナンバーは既刊閲覧をご覧下さい。
食は、人が生きる上で欠かせません。子どもの場合、胎児の時も含め親から栄養を与えられて、成長していきます。生後の母乳や離乳食をはじめ、親が子どもに食を与える際、親のことばがけが必ず伴います。つまり、子どもの成長過程で食とことばは不可分な関係にある日常的な実践と言えるのです。
それゆえ、子どもにとって、食は栄養を摂取する行為と単純に言えません。そもそも食の摂取は、人の身体と脳と環境の相互作用に直結している営為です。子どもは、食にともなう視覚、味覚、嗅覚、触覚の刺激を全身に受け、同時に親や家族を含む養育者のことばがけに触れながら音声と動作や顔の表情等の刺激も受け続け、意味を推論し、言語能力と認識力を身につけていきます。
一方、複数言語環境で成長する子どもの場合、そのような意味の食という日常的な実践はより複雑になります。例えば、移民家族の場合、家庭内の食と学校やコミュニティの食が異なることもあるでしょう。国際結婚した夫妻の間で食の嗜好が異なる場合、親はどちらの食を子どもに与えるのか日々考えるかもしれません。日本で暮らす国際結婚家族の場合、子どもは学校の給食や食育実践で、養育者が家庭で与える食とは異なる食を摂ることになるかもしれません。さらに、幼少期の子どもは親に抱かれて国境を越えて移動するたびに食環境が大きく変化します。海苔を巻いたおにぎりを見たクラスメイトが「こんなのを食べているからお前の髪の毛は黒いんだろう」となじられた記憶を語る子どももいます。家庭の食以外にもコミュニティの食や外食、ファーストフードなど、移動をともなう成長過程で出会う多様な食習慣も人を作るのかもしれません。子どもの誕生会や節目のイベント、人生儀礼、ライフイベント等においても食は欠かせません。
複数言語環境で成長する子どものことばに注目すると、未解明な多様な課題が見えてきます。例えば、食卓で食事をしながら何語で語らうのか、その言語選択と食事はどのような関係にあるのか、養育者は食事にどのような思いをこめているのか、その子どもとの共同経験は子どもの成長期の言語習得・学習にどう影響するのか、あるいは幼少期の食の経験は成長期やその後の言語使用と生き方、職業選択にも影響するのか、食とことばの記憶は人生全体においてどのような意味をなすのか等も、まだ十分に明らかになっていません。
以前、大学の授業で「あなたのソウルフードは何か」という問を出したところ、ある複数言語環境で成長した学生は幼少期から食した料理をあげ、かつ、その料理を作る家族の表情、空気感や幸福感などの記憶を詳細に語っていました。誕生から幼少期、成長期における食と複数言語にまつわる経験と記憶は、子どもの言語使用、人格やアイデンティティ形成、人生全体にどのように影響していくのでしょうか。
上記のような問題意識をもとに、複数言語環境で成長する子どもの「食とことば」をめぐる課題や日常的実践について、それぞれの知見や経験をもとに広く議論をしたいと思い、このテーマを設定しました。熱い議論や実践、心温まるエッセイ等を広く募集します。
いま,世界中で,移動する子どもたち(*)が増加しています。『ジャーナル「移動する子どもたち」― ことばの教育を創発する』(以下,本誌と略す)はそのような子どもたちのことばの教育について研究交流をする場となることを願って,創設されたジャーナルです。
本誌では,第二言語教育,母語教育,外国語教育,継承語教育などと分けず,子どものことばの学びに関する実践に結びつく研究の発信をめざします。実践には,今の子どもだけではなく,かつて「移動する子ども」だった大学生や大人まで含みます。
移動する子どもたちのことばの教育という課題は,グローバル・イシューであり,それゆえに,世界に共通する理念や教育哲学を作っていくことが,このジャーナルの目的です。
*移動する子どもたち:幼少期に複数言語を使用する環境で成長した子どもたち
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