ユパラート高校(タイ・チェンマイ)

報告者: 鈴木由美子 (国際交流基金ジュニア専門家)

1期生の鈴木由美子です。タイに来て3年目を迎えました。今年3月までバンコクにある早稲田エデュケーション(タイランド)で,1期生の原田さん,2期生の田中敦子さんと一緒に働いていましたが,2年の契約を終え,今年5月に国際交流基金からのジュニア専門家派遣でチェンマイにあるユパラート高校に赴任しました。

ユパラート高校は今年100年目を迎えるチェンマイでは伝統のある学校で,チェンマイ旧市街と呼ばれる堀に囲まれた中にあります。お寺や仏像がいたるところにあり,雰囲気のあるいい学校です。

私の仕事は主に

  1. 高校の先生を対象にした日本語研修(教師研修)
  2. 派遣校における日本語教育
  3. タイ北部地域の日本語巡回指導・学校訪問

の3つです。まだ赴任して1ヶ月ですが,今までの状況をお知らせしたいと思います。

1.教師研修

ユパラート高校の学生(高校2年生)とタイ人教師(ティラートさん)

タイ教育省の方針で中等教育の教員を日本語教員として養成するために国際交流基金バンコク文化センターが協力して教師研修プログラムを約10年にわたり続けていました。

昨年このプログラムは約200名の日本語教員養成を達成したため終了しました。

この研修出身者やチェンマイ大学などで日本語を主専攻で学んだ新人教師など,タイ北部の現役日本語教員の日本語能力維持と教授能力向上のために毎週金曜日,研修を行っています。

普段は孤軍奮闘していらっしゃる先生方の情報交換の場としても活用してもらえるよう,閲覧教材の管理や地域の日本語教育事情を把握し,情報を収集するのも仕事のうちです。

先生方の日本語能力は能力試験3級程度で,ほとんどの人が2級を目指して勉強し続けています。忙しい合間をぬっての日本語学習なので,漢字は覚えてもすぐに忘れてしまって,見ていて本当に気の毒になります。来世で合格します,などと言う先生もいらっしゃって,なんとかしたいと思いながら研修プランを立てています。教授法も紹介だけにとどまらず,先生方の経験と知恵を生かせるようなワークショップ形式にしたいと思っているのですが,まだなかなかうまく回っていないのが現状です。

いずれは,この教師研修参加者達が教師会などの団体を形成し,日本語キャンプやスピーチ大会など,北部地域の高校が合同で行う日本語に関するイベントの主催団体になってくれればと,その働きかけの方法を思案中です。

2.派遣校における日本語教育

ユパラート高校の授業風景

現在2名の若いタイ人日本語教員とともに約400名の学習者を教えています。

選択科目で週2時間日本語を勉強する中学2年生と3年生が300名,専門科目で週8時間勉強する高校1年生と2年生が100名います。まだ全員の顔を覚えきれていないのですが,日本語で話しかけてくる学生もいて,とてもかわいいです。

私が実際に授業を行うのはティームティーチングの4時間程度で,その前後に教案のチェックをしたり,授業後にコメントを言ったりします。一クラス40名程度と人数が多いので,日本語学習以前にクラスをコントロールするのが大変です。特に今年の高校1年生は男子生徒が多く,元気がよすぎて時には勉強になりません。ほとんどの授業をタイ人の先生が行いますので,彼らが心から必要だと感じて,いいと思って自律的に動いてもらうために,自分でやった方が早いことや一々説明するのが面倒くさいと感じることもありますが,一方的なコミュニケーションだと受け取られないように気をつけています。

3.巡回指導・学校訪問

ユパラート高校の校舎研修に参加していない学校の先生からの相談にのるために実際に授業を見学に行ったり一緒に授業を行ったりすることも仕事の一つです。6月に入って3校の学校から依頼状が来ています。そのうち2校はチェンライといって車で3時間程はなれた場所なので泊りがけで出張ということになります。チェンマイから離れれば離れるほど,日本人に接した経験をもたない学習者がいるので,なるべくたくさんの学校に行って授業をしたいと思っています。

以上が現在の私の仕事です。直接,研究につながるような業務ではありませんが,教師研修は自分のティーチングスタイルを自覚できるいい機会ですし,日本語教育に携わる人間として,多くの気づきをもたらしてくれるのではないかと期待しています。それらの気づきの中からいい研究テーマが見つけられるよう,これからも意欲を持ち続けていようと思っています。タイ北部地域で日本語教育を経験してみたいと考えていらっしゃる方はぜひご連絡ください。