著書紹介

グローバル化と言語政策――サスティナブルな共生社会・言語教育の構築に向けて

人の国際移動が増加しているなかにあっても日本には持続可能な社会構築に必要な言語政策を欠いているのが現状である。本書は,国内外と移民・マイノリティ・各専門分野別の言語政策について検証し,グローバル化の進展のなかで日本が示すべき政策について示唆を与える。

日本語教育でつくる社会――私たちの見取り図

  • 表紙:日本語教育でつくる社会――私たちの見取り図日本語教育政策マスタープラン研究会【編】,宮崎里司(5章・9章担当)ほか【著】
  • A5版234ページ
  • ISBN:978-4-904595-10-7
  • 定価:1680円(税込)
  • ココ出版より2010年10月刊

目次

  • はじめに
  • 第1章 外国人と共に生きる社会――なぜ「日本語教育振興法」が必要なのか
  • 第2章 地域日本語教育システム(1)― コーディネーターと地域日本語教育専門家
  • 第3章 地域日本語教育システム(2)― 地域日本語教育センター
  • 第4章 日本語教育政策のマスタープランと国立日本語教育研究所
  • 第5章 義務教育のあり方と日本語教育――教育基本法・教員免許制度
  • 第6章 言葉にかかわる権利を考える――言語学習権(日本語・母語)
  • 第7章 日本人と日本社会に対する日本語教育の貢献
  • 第8章 年少者(児童・生徒)に対する日本語教育
  • 第9章 企業・大学・行政・地域をつなぐ日本語教育
  • 第10章 地域力を育む日本語学校
  • 座談会 日本語教育には何ができるのか:田中克彦,池田香代子,今村和宏,木村哲也(司会)
  • この本の内容をよりよく理解するためのキーワード集
  • 日本語教育振興法案の骨子例

日本語教育振興法法制化WG(日本語教育学会)のWEBサイトで,一部内容が閲覧できます。

ことば漬けのススメ

第2回国際理解促進優良図書優秀賞を受賞

表紙:ことば漬けのススメこのたび,拙著『ことば漬けのススメ』(明治書院)が(財)国際言語文化振興財団の主催する第二回国際理解促進優良図書表彰の語学学習書部門の優秀賞を受賞しました[明治書院による報告]。この賞は「国際交流の促進および国際問題の理解に役立ち,国際コミュニケーションの発展に寄与する著書,翻訳書,および実用語学力の向上に貢献する語学指導書」に贈られる賞です。

  • 宮崎里司【著】,ますざわ梨紗【まんが】
  • ISBN978-4-625-63408-6
  • 定価:1,050円(税込)
  • A5判,120頁,2010年5月明治書院より公刊[紹介ページ

出版社による内容紹介

ことばを学ぶことに,苦手意識を持っている人は少なくないはず。先生や辞書がない環境で,ことばをマスターした外国人力士や外国人おかみは,一体どんな風にことばを身につけたのでしょう? はたまた,留学を最大限効果的に活用する秘訣など,語学のヒントをマンガで楽しく紹介。『外国人力士はなぜ日本語がうまいのか』の著者があなたのことばの学習を応援します!小学校での外国語教育や日本語教育に携わる方々にもオススメ。

オーストラリア研究――多文化社会日本への提言

着実に多文化社会へ変容する日本へ,オーストラリアはどのような視座を与えてくれるのか。ボーダーを越える人々/教育と言語政策/記憶と表彰に関する11の論考が示す,日本社会への提言。オーストラリアに関心ある一般,大学生,研究者必読。

早稲田大学オーストラリア研究所(所長:宮崎里司)から,2冊目の出版。

参考:『オーストラリアのマイノリティ研究』

移民時代の言語教育――言語政策のフロンティア(1)

移民受け入れをめぐる議論が日本で急速に活発化している。しかし,この国の移民政策は,これまでの外国人政策の反省の上に築かれるべきだろう。多様な他者を受け入れる「移民の時代」を迎えるにあたって,求められる言語政策・言語教育とは何か。共生のための言葉の在り方をめぐり,教育学(佐藤学)・公共哲学(桂木隆夫)・言語学(J・V・ネウストプニー)などの研究者,企業・NPO・NGOといった外国人支援の現場で活動する専門家(柴崎敏男,坂中英徳,中山暁雄)が議論を展開する。巻末に,現職国会議員(民主党・中川正春,自民党・礒崎陽輔)を交えた座談会を収録。言語政策,言語教育政策の最前線における課題と向き合う。

タスクで伸ばす学習力――学習ストラテジーを活かした学びの設計

  • 表紙『タスクで伸ばす学習力』伴紀子(監修)・宮崎里司(編著)
  • 132ページ A5判
  • ISBN:978-4-893587-15-2
  • 凡人社より,2009年5月23日刊行

本書は,学習ストラテジーの知識をしっかり押さえる理論編と,理論に裏打ちされたタスク例を紹介するタスク編の2部構成。自律学習できる学習者を育てることを目標に,メタ認知ストラテジーに焦点を当てた理論とタスクを紹介しています。これから日本語教師を目指す人,日本語教師になったばかりの人はもちろん,新しいタスクを試みたいベテランの先生方にもおすすめです。(凡人社による紹介文)

外国人力士はなぜ日本語がうまいのか――あなたに役立つ「ことば学習」のコツ

この本は,現役外国人力士や,彼らの日本語学習を見守る,相撲部屋の親方,おかみさん,兄弟子,相撲教習所,それにご近所応援団の方々とのインタビューをもとに書かれたものである。力士達のユニークで効果的な日本語習得のメカニズムやその方法について,わかりやすく解き明かすとともに,彼らの日本語習得法は,最新の言語習得理論に合致していることを証明したものである。さらに,こうした方法を,どのように一般の日本語教育に応用していくべきかを考察し,これからの日本語教育への新しい提言を盛り込んでいる。日本語学習者や日本語教育関係者ばかりでなく,効果的な「外国語学習参考書」として,外国語で苦労している日本人にも役立つ内容が盛り込まれている。第二言語習得,学習ストラテジー,自律学習,インターアクション,さらにはイマージョンプログラムなどに関心のある学生,教師,研究者必読の書。

主な登場力士
曙(ハワイ),旭鷲山・旭天鵬・朝青龍(モンゴル),国東(ブラジル),星誕期(アルゼンチン)

おかみさん学――なぜ人を育てるのがうまいのか

人を育てるのも,人をひきつけるのもうまい,相撲界,旅館,料亭のおかみを取材。彼女たちの魅力とパワーの源泉を探る。

著者は,早稲田大学で,留学生に日本語を教える授業を持っている。あるとき,外国人力士は,めざましいスピードで日本語が上達していくのはなぜかと興味がわき,外国人力士に日本語上達のコツを取材する。その過程で,日本語だけでなく,角界での習慣やしきたりなどを教えているのが「おかみさん」であることがわかる。そこで,横綱朝青龍を育てた高砂部屋の長岡恵さん,角界最小の荒汐部屋の鈴木ゆかさんから,若い力士を育てる秘訣を聞く。また,日本には,角界だけでなく,「おかみさん」と呼ばれる人たちが多い。彼女たちは,内助の功よろしく,人材育成から経営まで,お店を切り盛りする主役でもある。そこで,向島の料亭,温泉旅館などを切り盛りする「おかみさん」たちを取材。とくにアメリカ人のおかみさん,『藤屋』の藤ジニーさんの話は,おかみさんとしてどんな修業を積んだかがわかり,日本独特の文化論としても面白く読める。

(以上は,PHP研究所による紹介文)

新時代の日本語教育をめざして――早稲田から世界へ発信

2005年4月から,『日本語学』で連載された,『新時代の日本語教育をめざして:早稲田大学大学院日本語教育研究科の取り組み』をもとに,加筆訂正された本書は,近年,日本語教育の分野で,内外に積極的な発信を行う,研究科3名の教授が,第二言語習得,年少者日本語教育,及び言語文化教育の分野で,これまでの日本語教育の問題点を明らかに,問題解決のための処方箋を調合する。日本語教育をミクロ・マクロの両面から,ダイナミックに捉え,ことばや文化,社会と有機的に結合しあう日本語教育に関心ある者の必読書である。

接触場面と日本語教育――ネウストプニーのインパクト

  • 表紙宮崎里司,ヘレン・マリオット 共編著
  • 明治書院(紹介ページ
  • 10,290円(税込) A5判457頁 ISBN4-625-43319-3

本書は,編者が,冒頭で著しているように,「これからの日本語教育や,談話習得研究に対する,我々が立つべき軸足の決意表明」であり,「今後の研究発展の礎石」となるべき一冊として評価できる。

『接触場面と日本語教育』というタイトルには,本書に一貫して流れる理念の凝縮が感じられ,理論的支柱であり,かつ先達の徒である,ネウストプニー氏の高弟集団やその予備軍による,力強いメッセージが読み取れる。3部構成から成る本書は,第一部で,接触場面の理論的考察ならびに,さまざまな方法論を応用した,実証研究色の強い論文を配置し,続く第二部では,内的場面の研究も含めた,教師以外の接触場面の参加者の研究,年少者の第一言語,年齢,日本語以外の言語管理問題に言及した接触場面や,その参加者の多様性に注目した論文を用意している。最後の第三部には,代表的な接触場面である,教室場面の参加者間(教師と学習者)のインターアクション,リソース,第二言語や外国語としての日本語教育などについて,問題分析が試みられ,現在,接触場面として考えられる,ほぼすべての研究課題が盛り込まれているといえよう。今後の接触場面研究はもとより,広く日本語教育の研究・教育実践を志す研究者にとって,格好の道標となる一冊であり,大学院生はもちろん,研究者にとっても,十分満足いただけるものである。

この書評を担当しながら,啐啄同時ということばが浮かんだ。原義は,雛が孵化するとき,殻の中で雛がつつく音を聞き,母鶏が殻をかみ破ることであるが,禅宗では,師家と弟子の働きが合致するといった意味で使われている。「接触場面」に関する研究は,決して,古稀を迎えられたネウストプニー先生から,本書に寄稿した研究者に委譲されたわけではない。課題に向かって,お互いに響きあいながら,インターアクション問題という殻を打ち破る,久遠の追究課題なのである。日本語教育,社会言語学,応用言語学といった分野の必読者といえよう。(評者:宮崎里司)

言語研究の方法――言語学・日本語学・日本語教育学に携わる人のために

  • 表紙J.V.ネウストプニー,宮崎 里司 共編著
  • くろしお出版 刊(紹介ページ
  • 1800円 A5判274頁 lSBN4-87424-249-9 C3081
  • この本の書評

近年,言語研究でも定量的・定性的分析をもりこんだものが増え,調査方法がクローズアップされつつある。とはいえ,言語学の分析では方法そのものを扱った概説書がきわめて少なく,これまでは社会調査法やコンピュータを用いた統計処理についての参考書などに頼らざるを得なかった。その渇を癒してくれるのが本書である。

方法論のプロセスやデータ収集,調査研究の倫理的問題を扱った第一部「総論」に続いて,第二部「各論」ではインタビュー,アンケートからアイカメラ,脳波研究,学習ダイアリーに至るさまざまな手法が紹介されている。「文献紹介」と銘打った第三部ではこうした方法を駆使して行われた研究の実例が挙げられており,第一部,第二部で取り上げられた方法がどういうテーマの研究にどのように使われたのかが説かれている。言語研究の方法を広く,くわしく,わかりやすく扱った最初の書として広く推薦したい。

評者:平高史也氏 『言語』(大修館)2002年8月号掲載

日本語教育と日本語学習――学習ストラテジー論にむけて

  • 表紙執筆者:J.V.ネウストプニー,伴紀子,宮崎里司,浜田麻里,吉野文,横須賀柳子,村岡英裕,岡崎眸,岡崎敏雄,斎藤里美,田中望,春原憲一郎,ヘレン・マリオット,ショーン・ルービン
  • 2200円 A5判248頁 lSBN4-87424-179-4 C3081
  • この本の書評へ

言語教育は,「教育」であるという意識が依然として強い。しかし一方では近年,言語習得において,学習者自身が,はるかに積極的な役割を果たしていることが明らかになってきた。同時に,学習ストラテジーの理論によって,「教育」一辺倒から逃れられるようになったと意識する傾向も強くなってきた。ここでいう学習ストラテジーとは,学習者が言語を習得するために自律的に使ういろいろな行動という意味である。

本書は,この学習ストラテジーを分かりやすく解説する入門書の役割を果たすと同時に,将来の研究への新しい方向を示す役割も兼ね備えている。そして,一般的な学習ストラテジー論の紹介ではなく,あくまでも,日本語教育を見据えたものである。そうした意味で,大学で行われている日本語教育プログラムの学生,大学院生及び若手研究者には,是非読んでいたたきたい。各執筆者によるさまざまな分野の議論を通して,学習ストラテジーが,日本語教育にどのように関わっているのかが読み取っていただけるはずである。全体は3部から構成されており,第1部の「総論」では,日本語教育における学習ストラテジーとは何か,どのように研究されてきて,そして今後どのように研究されるべきかを扱っている。第2部の「各論」では,日本語教育における学習ストラテジーの個々の研究について議論されている。さらに,第3部の「学習ストラテジーへの提言」では,これからの学習ストラテジーの個々の理解,考え方についての提言が盛り込まれている。なお,巻末には,インデックスとあわせ,学習ストラテジーのそれぞれの分野ごとの参考文献を加えた。学習ストラテジー研究の一助になれば幸いである。(評者:宮崎里司)