国語科教員として,日本語教師として

渡辺千奈津(研究内容紹介

第1回「私の目指す教員像――修士課程を振り返って」

大学院に入学してから早2年の歳月が立ち,修士課程を修了することとなりました。私の大学院進学の目的は,自分が目指すべき教員像と教育実践を明確にすることでした。院入学前は,自分がなぜ教員になりたいと思ったのかさえ見失っていたのですが,川上研に入ってからは,子どものことばの教育についてゼミ生と様々な視点からディスカッションをしたり,ボランティア実践に参加するなかで,自分がどんな教員になりたいのか,また,どのようなことばの教育を実践したいのかについて,毎日考え続けました。

私は初め,教科書に記載されていることをきちんと覚えたり,テストや課題などを問題なくこなせるようになることが教育の大きな目的のように漠然と考えていました。そのため,週に一回の日本語ボランティアでは,母語話者の子どもたちの学習に追いつくことができないと焦りを感じながら実践をしていました。しかし,川上先生やゼミ生と実践研究について議論を深めるうちに,今までの私の考え方は,子どもの視点で教育を考えていなかったのではないかと気付かされました。子どもが何を学びたいのか,何をできるようになりたいと思っているのかを考えず,他の子どもたちと同じことができるようになることを目指して教育実践を行っていたのでは,子どもたちの学ぶ意欲も能力も育っていかないのではないかと考えるようになったのです。また,子どもとのやりとりやコミュニケーションにも重きを置いて教育を考えるようになりました。なぜ教室に大勢の子どもたちが集まって学習をするのか,なぜ体験を重視して教育を行うのかを考えれば,教育の目的というものがおのずと分かってくるものなのかもしれませんが,教育を一言で表すとコミュニケーションだと言えるようになったのは,やはり川上研究室で2年間実践研究を続けてきた成果だと思います。私が目指す教員像とは,学習者の視点に立って教育を考えられるようにすることと,教室でのコミュニケーションが活発に行えるよう工夫できるようになることです。どちらも頭では分かっていても行動に移すのが難しいですが,少しでも私が目指す教員像に近づけるよう,努力していきたいと思います。

修士課程修了後は,在籍中から続けていた都内の外国人学校の国語科非常勤講師として子どもたちに「国語」を教え,さらに早稲田大学の日本語教育研究センター契約講師として留学生の日本語教育にも携わることになりました。外国人学校の方は,一学期は小学生を担当していましたが,9月からは小学生に加えて高校生も担当することになり,高校生や大学生という大人に近い人たちに対する教育に携わる機会をいただくことができました。将来的には,中学校教諭になることが私の夢ですが,今は,いろんな人たちとの出会いを楽しんで,日々学んでいきたいと思っています。国語科教員として,また,日本語教師として,子ども・大人を問わず,ことばの教育に携われることに喜びを感じつつ,これからも精進していきたいと思います。

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