国際教養学部のクラスから
間橋理加 (研究内容紹介)
第1回「国際教養学部のクラスから」 [2005-03]
2004年9月に修士課程を修了し,9月より早稲田大学国際教養学部(以下,国際教養学部)の契約講師をしております。国際教養学部では初級クラスを3名の講師で担当しました。専門が「年少者日本語教育」であり在学中は主として,外国籍の小学生(以下,JSL児童)に日本語による教科指導を行っていたので,成人に対する日本語教育は久しぶりであり,初めてのクラス担当となりました。
しかし,日本語教師は「何のための誰のための日本語教育か」を念頭に置き指導する必要があることを在学中に学び,JSL児童の指導でも実践経験があったので,成人に対する日本語指導でもすでに培った指導法を適用することが出来ました。
大学院在学中は,日常会話に問題がみられないけれど教科指導を必要とする小学校高学年に在籍するJSL児童に対して国語,社会を中心とした教科指導を行っておりました。実際の指導法は教科という枠を少し離れて,まずは学習項目に関するJSL児童自身のそれまでの経験を聞き,話をし,興味を引き出すことから始めました。そこでは,必要となる日本語の語彙や表現を実際の場面ではどのように使用するかを理解させることを目的としました。そしてそれらの定着を目的として,「書く」指導を行うという一連の流れで日本語指導を行いました。国際教養学部の授業でも教科書の例文にこだわらずに「学習者自身が自分を語る」ことを中心とした指導を行っております。
また,JSL児童に対しては「取り出し」指導を行っていたので,日本語指導者とクラス担任との連携が非常に重要であることを実践より学びました。成人に対する指導経験はボランティアでの個人指導が主だったので,国際教養学部秋学期(2004年9月~2005年2月)で3名の講師がクラスを担当するという経験は初めてでした。初めて使用する教科書で,バックグラウンドの異なる3名の講師がどのような指導を行うかという認識の統一が必要であり,連携の大切さを再認識しました。
国際教養学部は一般の日本語学校のように日本の大学や大学院入学を目指す予備教育が中心ではないので,学習者のモチベーションが多少低いという難点はありますが,各人が独自のペース,興味,関心について日本語を学習しています。つまり,ここで日本語を教えるということは,日本語教育の専門が何であれ在学中に「日本語教師はどうあるべきか」を学んだ修了生にとってまたとないチャンスだと言えます。
来週から国際教養学部の春学期(2005年4月~6月)が始まります。気持ちを新たに新しい講師陣で授業に臨みたいと思っています。そして「年少者日本語教育」については,学校現場での日本語教育者受け入れに対する姿勢がごく限られている現在,勉強会などに参加し,その動向を見守って行くつもりです。