無窮花を見上げて――優子の仁川便り
青木優子(研究内容紹介)
1学期を終えて[2009年6月]
3月から韓国の短期大学で日本語を教え始めました。あっと言う間に1学期間が過ぎ,夏休みに入って少しホッとしながら,この4ヶ月を振り返る時間を得ています。メルボルン便りに続き,韓国での授業や生活も,ここでご報告させていただきたいと思います。タイトルの無窮花(ムグンファ)は韓国の国花で,生命力が強く韓国を象徴する花だそうです。
ここは,ソウルから約40㎞西に位置する仁川(インチョン)という街です。韓国第3の都市であり,古くからの港町として,日本の横浜に例えられることが多いそうですが,2001年に仁川国際空港が開港し,韓国の空の玄関口としても知られるようになりました。私がお世話になっている仁川専門大学は,仁川市立の短期大学で,日本語科を含む人文社会学部と,工学部,芸能体育学部から成っています。日本語科には昼間学生が約120名,夜間学生が約90名在籍しており,卒業までにJLPTの1級を取得することが目標とされています。韓国では,外国語(特に英語・中国語・日本語)学習に対する社会の関心が日本より強く,日本語が多少できるという人はザラだそうです。そのため,せっかく日本語科に入ったのだから,1級を取らなければ意味がないという強い意志を持った学生が多く,大学からも1級を取らせる授業を求められているように感じます。
「ことばの学び」とは何か,これは研究室でずっと議論してきたことですが,ここに来て再度考えるようになりました。子どもとは違って学習動機や目的を明確に持っている学生に対し,教師である私が持つ教育観をどう伝え,理解してもらうか,そして,教師を含めた学び合いの場を学生達と一緒にどのように創っていけるか。短期大学のため,2年間という短い大学生活の中で,学生に必要な「学び」とは,試験に合格するためや,良い会社に就職するための学習だけではないと信じながらも,それを学生達と理解し合い,具体的な形にしていくためには,夏休みも引き続き学生達の声を聞いていく必要があるなと感じています。