2003年9月入学(6期生)

小西玲子(コニシ レイコ)

研究内容:タイ語母語話者の音声習得に関する一考察――シとチの知覚と生成を中心として

タイ語を母語とする日本語学習者(Thai Learner:以下TL)の特徴として,シとチの混同は周知の事実である。このシとチの誤用は,意思疎通に支障をきたすだけでなく,TLに対するマイナスの評価にも結びつくという問題も包含している。また筆者がTLに行った発音に関するアンケート調査においても,TL自身がシとチを混同するこの誤用を問題点として認識しており,発音を改善するための音声指導を要望していることがわかった。

そこで,TLに対する有効な音声指導を考えるために,TLの知覚と生成におけるシとチの音声環境として,6環境2語中位置を設定し(以下参照),語頭と語中における音声環境別の難易度と混同の方向性を明らかにすることを本研究の目的とした。調査協力者はタイのタマサート大学教養学部の日本語主専攻の学生の1年生から4年生である。

環境1.
3拍語が全て自立拍からなっている単語
(ママ・ママ)(ママ・ママ)
環境2.
3拍語に長音を含むもの
ーマ・ーマ)(マー・マー
環境3.
3拍語に促音を含むもの
ッパ・ッパ)(マッ・マッ
環境4.
3拍語に撥音を含むもの
ンマ・ンマ)(マン・マン
環境5.
3拍語で調査音が連続し,後続音にシがくるもの
シマ・シマ)(マシ・マシ)
環境6.
3拍語で調査音が連続し,後続音にチがくるもの
チマ・チマ)(マチ・マチ)

2つのテストの結果は統計的手法を用いて分析・考察を行った。まず,正聴率・正用率から難易度の差を論じ,誤聴数・誤用数から,誤聴・誤用の方向性を検討した。「その他の誤聴・誤用」の回答については,別枠で分析・考察した。

その結果,本研究の目的であったTLのシとチの知覚と生成における6環境2語中位置での難易度や誤聴・誤用の方向性を明らかにでき,分析・考察の過程で,これまで不明だったTLのシとチの知覚と生成に関する幾つかの問題点が把握できた。更に,この結果に基づいて,有意味語を配したシとチの「聞き取り練習」「発音練習」のための表を作成することができた。これらの研究の成果を今後のTLに対する実際の音声指導に活用して行きたいと考えている。

業績

そのほか

  • 出身:関東地方
  • 趣味:読書,カラオケ,剣道(参段)