第14回

開催要領

  • 日時: 2011年2月26日(土)13:00~16:00
  • 会場: 早稲田大学 早稲田キャンパス11号館501教室[アクセス
  • 参加費: 無料(事前申し込み不要)

基調講演では,40年ものご経験を持つ声優界の大ベテランの若本規夫氏(シグマ・セブン所属)に声で意図・感情を伝えるとはどのようなことかお話を伺います。アクセント・イントネーション・声色など,我々が日頃意識していない日本語の音声特徴の使い分けにおける工夫や留意点をご教示いただきます。

また,演じられた役柄はアニメ・ナレーション・外国映画など数百にもなり,音声コミュニケーションに見られる発話キャラクタについて,人物像をどのように音声で表現されているのかについて伺います。

若本氏によると,日本語がほとんどできないファンの方々も声の力,声の表現力で感動するそうです。この貴重な機会にぜひ「音声表現」の持つ力について,参加者の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

プログラム

13:00~
開会挨拶
13:10~ 第一部:基調講演
「音声で気持ちを伝える――声優としての音声表現の工夫」
若本規夫氏(シグマ・セブン所属 声優)
14:10~
質疑応答
15:00~ 第二部:研究発表
「声で気持ちを伝える」古賀裕基 氏(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
「声で伝えるイントネーション学習」村田佐知子 氏(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
16:00
閉会

若本規夫 氏 プロフィール

アニメ「戦国BASARA」(織田信長),「名探偵コナン」(大滝警部),外国映画「プリズン・ブレイク」(セオドア・“ティーバッグ”・バッグウェル),「バットマン・ビギンズ」(ヘンリー・デュカード),「ナルニア国物語」(秘密警察長官モーグリム),ナレーション「嵐にしやがれ」ほか多数

報告

戸田貴子(早稲田大学大学院日本語教育研究科教授)

2011年2月26日,第14回日本語教育と音声研究会が早稲田大学で開催された。本研究会は年2回,7年間にわたり一般公開を行ってきた。今回の開催趣旨は音声コミュニケーションにおいて声で意図・感情を伝えるとはどのようなことかを考察し,日本語学習者に対する音声教育について考えることである。

研究会は第1部の基調講演および第2部の研究発表2本からなり,第1部「音声で気持ちを伝える-声優としての音声表現の工夫」では,声優界の第一線で活躍する若本規夫氏をお招きした。若本氏の出演作品はアニメ(「サザエさん」「名探偵コナン」「ドラゴンボールZ」),外国映画の日本語吹替版(「プリズン・ブレイク」「バットマンビギンズ」「ナルニア国物語」),ナレーション(「嵐にしやがれ」ほか多数)など数百にも及ぶ。第二部は早稲田大学大学院日本語教育研究科の古賀裕基氏による「声で気持ちを伝える」と村田佐知子氏による「声で伝えるイントネーション学習」の二本の研究発表が行われた。

会場には2時間前から参加者の方々が詰めかけ,総参加者数は207名に上った。日本語のアクセント・イントネーションなどの音声特徴について,楽しい実例を交えつつ話が進み,「母音の性質に気を配ること」というような具体的な工夫も紹介された。また,原稿の棒読みがいかに魅力に乏しいものかを実演され,音声として表出される部分はあくまで「氷山の一角」にすぎず,実は水面下に隠れている見えない部分が重要であるとの指摘がなされた。単に表面的な声の使い方のテクニックではなく,音声表現において最も重要なのは,聞き手に伝えたい内容や気持ちであるというメッセージが心に響いた。まさに,日本語学習者に対する音声教育においても留意すべき点であると言える。

質疑応答の時間も終始和やかな雰囲気で,「サザエさん」を使った日本語学習をどう思うかなど,数多くの質問が寄せられた。若本氏によると,日本語がほとんどできない海外のファンも声の表現力で感動するという。近年,国内外でアニメが日本語学習動機になる場合もあることを考慮すると,若本氏の声は日本語教育にも少なからず貢献していると言えるであろう。

  • 戸田貴子(2011年5月).日本語教育タイムズ:第14回日本語教育と音声研究会開催――音声で意図や感情を伝えるプロの声優が「伝える音声」を講演『月刊日本語』50,64-65.[ダウンロード:PDF

大久保雅子(「日本語教育と音声」研究会事務局)

2011年2月26日(土)に若本規夫氏(シグマ・セブン所属 声優)をお招きし,第14回「日本語教育と音声研究会」を開催いたしました。第一部の基調講演で若本氏に「音声表現」をテーマにご講演いただきましたが,多くの参加者をお迎えすることができ,大変盛況な会となりました。当日は日本語教育関係者のみならず,声優志望者や若本氏のファンの方々にも多数お越しいただきました。開始時間の数時間前からお越しいただいた方々や遠方からもたくさんの方々にお越しいただき,本研究会を楽しみにしていてくださったことを大変嬉しく思っております。ご参加いただいた方々に心より感謝申しあげます。

会場では参加者が若本氏のご講演に熱心聞き入り,メモを取る様子が多く見受けられました。特に質疑応答では,参加者から積極的な質問が数多く寄せられ,若本氏からは音声表現や外国語学習,声優という職業に関することなど,様々なことをご教示いただきました。

若本氏のお話は,“音声で気持ちを伝えることの魅力”が随所に伝わってくるものでした。日本語教育においても,“声でどのように自分の気持ちを伝えるのか”,“イントネーションをどのように使い分ければいいのか”ということがコミュニケーション上とても重要であると考えられています。