書評

山本雅代(2000).『日本のバイリンガル教育』明石書店.

現在,日本には複数の言語を背景に持つ子どもが多く存在している。その中には,母語を含む言語の維持・伸張が困難な言語環境に育つ子どもも多い。本書では,日本の多様な言語背景をもつ子どもに対する言語教育の現状,権利,歴史的背景を概観,今後の日本における彼らの教育を受ける権利,「バイリンガル教育」の展望を考察している。

日本における「バイリンガル教育」の具体例として,北海道様似のアイヌ語教室や在日朝鮮人児童生徒への民族学級,公立学校でのニューカマーの子どもの日本語・母語指導,沖縄のアメラジアンスクールが取り上げられており,多様性を知ることができる。特に日本語を母語としないニューカマーの子どもにとっては,母語の発達の程度により,第二言語である日本語の発達が大きく影響される。そのため母語教育や母語を活用した日本語教育が必要とされており,ここではコンピュータを利用した遠隔指導による母語教育という新しい試みの報告もなされている。

本書における「バイリンガル教育」の定義が明確になされておらず,むしろ多言語教育を概観する一冊であるといえる。しかし,今後の多言語教育の議論へとつなげるための基本となる,日本の多言語教育の現状,課題を把握する入門書として最適な一冊である。(山田初)