書評

塘利枝子(1999)『子どもの異文化受容』ナカニシヤ出版

本書は,日本人帰国児童・生徒,外国人児童・生徒のような異文化のなかで育った子どもたちが日本の学校に増加しつつある中で,自分たちとは異なる価値観に基づく行動をする子どもたちを日本人児童・生徒はどう受け入れようとしているのか,共生のために必要な異文化受容を構成する態度とはどのようなものなのか,「受け入れる側」の子どもの異文化受容の特徴,異文化への対処行動,異文化受容態度に関与する要因,異文化と共生する態度を育む条件について,環境と個人特性の両面から考察することを研究目的としている。

筆者は,異文化との共生が必要とされる帰国子女教育受け入れ推進センター校での一年間に渡る参与観察・被観察者へのインタビュー・質問紙調査等で得られたデータを中心に,仮説―検証の形をとりながら,上記の項目に対する分析を行っている。その結果,異文化受容態度には,子どもの発達年齢・子どもが属する環境の異文化度(まわりにどの程度帰国児童生徒・外国人児童生徒がいるか)が関係しているということ,さらに異文化と共生するには柔軟な態度が必要であるということが導き出され,この異文化態度に必要な柔軟性は,異文化を受け入れようとする子どもの判断の独立性,好奇心,非自民族中心主義といった態度に支えられていると結論づけた。

本書のような,異文化を受け入れる側に焦点をおいた研究はまだ数が少なく,本書から導き出された研究結果は,今後も増加傾向が予想される異文化を背景に持つ子どもたちと日本の子どもたちとの共生を考え行く上で大変示唆的であり,「国際理解教育」が子どもたちにとっての真の「国際理解教育」になるために必要な要素とは何かを考えさせる。そしてこの研究結果を軸に,受け入れ側のみに焦点を当てる形から,異なる文化を持つ者同士の相互作用・関係性,教師の異文化に対する考え方や態度,教育観が子どもの異文化受容にどう影響していくのかなど展望性の見える研究であり,今後の研究成果が期待される。(森沢小百合)