書評

小内透(2003)『在日ブラジル人の教育と保育―群馬県太田・大泉地区を事例として―』明石書店

本書は公立小中学校・ブラジル人学校,不就学者,保育所・託児所を取り上げながら,在日ブラジル人の子どもたちの教育と保育の全体像を把握するためのアンケート調査・面接調査を行い,在日ブラジル人の子どもの教育・保育形態の違い,教育・保育の場を通した教師・保育者や日本人親子との関係,教育・保育と地域社会との関連に視点をすえて分析している。

その分析からブラジル人の教育と保育の実情と課題をあげ,著者は,多文化を前提にした受け入れを考えることが教育問題解決のひとつの方法であると述べ,日本の外国人学校の位置づけ,出稼ぎ意識をベースにした教育戦略,労働や生活の場におけるセグリゲート化の影響を検討する必要があると述べている。

本書は公立中学校,ブラジル人学校,不就学者の在日ブラジル人の子どもが実際に日本でどのような道をたどっているのか,また今後彼らはどのような可能性があり,どのような道をたどるべきなのか,彼らに対しての日本語,母語,教科を含めた教育はどのように行っていくべきなのかといった考察までは踏み込んでいない。しかし,フィールド調査によって実情を提示し,課題を分けてまとめてある点は具体的でわかりやすく,さらに在日ブラジル人の子どもの多様性を取り上げている点も高く評価できる点であり,今後の在日ブラジル人年少者研究の基本文献のひとつと言えよう。 (坂田麗子)