書評
Teachers of English to Speakers of Other Language [TESOL] (2002). Tesol/ncate standards for the accreditation of initial program in P-12 ESL teacher education..
本書は,アメリカの大学の教員養成機関の認可団体であるNCATE(National Accreditation of Teacher Education)によって認可された,12年生以下対象のESL教員養成のための指針である。作成したTESOLは英語非母語話者に対する英語教育を行う教師の団体で,出版活動や研究の助成の他に現職教師のキャリアアップのためのサポートやESL教師を志す人への情報提供などを幅広く行っている。
本書では,多様な文化の価値を「社会の資源」として認めつつも,学校の機能として「有力な文化(dominant culture)」への統合を挙げ,教師志望者の知っておくべき事柄として,英語非母語話者(ESOL)の生徒と,英語母語話者の生徒の学習上・社会的統合の方法を挙げるなど,多様性と社会としての統一のバランスをいかに取るかががアメリカという国家にとっての大きな課題として認識されていることがまず目を引く。その上で社会が多文化主義を謳うのであれば,「有力な文化」そのものについての問いかけがあってよいはずだが本書では教師志望者は生徒のエスニックなバックグラウンドに対する配慮と理解を示すべきであると述べるにとどまっている。本書の前提となっているのは「アメリカ的」な文化的,社会言語学的な規範(norm)の教育という目標であろう。しかし,今後予想される多文化,多言語状況の拡大はこうした規範自体の捉えなおしを余儀なくするものになると考えられる。そうした問題点や課題を含めて,アメリカやカナダ,オーストラリアといった多民族状況「先進国」の取り組みは,日本における今後の学校教育を論ずるための材料として見落とすことの出来ないものであると言える。 (渡辺啓太)