書評

海保博之・柏崎秀子編著(2002)『日本語教育のための心理学』新曜社

本書は日本語教育に応用できる心理学の考え方を紹介した応用認知心理学の概説書である。内容は3部に分かれており,1部では,日本語学習者の心理について,心理学の理論や日本語学習者の異文化接触に関する実際の実験や調査の結果をもとに,知識獲得・思考能力・異文化の側面から分析されている。また,2部では,人間が言語をどのように獲得し,認知していくかを子どもの発達段階からみた心理学の知見の概観や日本語の学習者の日本語情報処理について,さまざまな角度から検討されている。3部では,日本語の効果的な学習指導法や評価について説明されている。

このように概説書であるため,心理学用語の説明は簡略にされているところもあり,心理学の初心者には理解に足りない場合もある。しかし,日本語教育と関係ある心理学エッセンスを紹介しつつ,著者の経験も取り入れて実際の場面で起こりうる問題について有効な情報を示唆してくれる本である。また,日本語教育にもよく登場する専門用語が分かりやすく説明されており,日本語教育に関わる人や日本語教育学を勉強する人にはお勧めしたい。

子どものための日本語教育に応用できるような心理学的知見は,子どもの言語発達に関する記述以外にもマルチメディア教材や漢字教育,異文化理解への見解等は子どもの指導で躓きやすい問題点を解決する手がかりになりうるだろう。 (朴智映)