書評
張麟声(2001)『日本語教育のための誤用分析―中国語話者の母語干渉20例』スリーエーネットワーク
著者の20数年に渡る日本語学習,日本語教育活動を通して気がついた中国語母語話者に見られる文法的誤用の傾向を20のトピックに絞ってまとめたものである。トピックは名詞,助詞,助動詞,授受表現,使役表現など文法体系全体に渡っていると共に,早く克服できるものや「化石」のように消えないものなど,誤用のバラエティにも留意している。
本書の形式は,各トピックについて,まず筆者が経験した誤用のエピソードを紹介し,次にそのトピックについて,いくつかのケースに分けて日本語の実例を挙げ,文法的な説明をする。日本語の実例は原則として小説,新聞記事から取っている。そして同じ意味内容を中国語でも表現し,そこから両言語の文法的背景の違いを説明する。最後にまとめとして,それぞれの誤用をケース別にして,簡潔にまとめている。
著者は誤用のメカニズムを解明しているのみで,誤用をなくすための指導法は提示していない。また,本書の20のトピックは中国語話者の誤用のほんの一部である。しかし,このような研究が今後も積み重ねられていけば,日本語教師にとって,教え方を工夫する助けにはなるだろう。
本書は日本語を学習する年少者には配慮されていないが,このような対照言語研究は年少者の言語教育にも必要であり,今後,年少者のための母語別の対照言語研究が進むことを期待する。 (飯野令子)