書評

秦野悦子編(2001)『入門コース ことばの発達と障害1 ことばの発達入門』大修館書店

本編は,子どものことばの発達過程について基礎的知識を提供したものである。8名の著者が,発達理論,乳児期のコミュニケーション,語意味,発話構造,社会的文脈における語用論知識,心の理解とコミュニケーション,物語ること,文字の知識と音韻意識についてそれぞれの基礎理論や分析データを紹介している。ことばの獲得に問題のある子どもへの支援のあり方を提言するためのシリーズ3部作の第1巻であり,健常児の言語発達を主に扱っている。

年少者の日本語教育には,成人の場合のそれと違い,子どもの言語発達過程を熟知することは不可欠である。行動主義,生得論的,相互作用論的の各アプローチを紹介しヒトが言葉をどのように獲得していくのかを論ずることに始まり,子どもを取り巻く社会的環境,心理にまで言及し,さらに発達段階におけるリテラシー能力育成について詳しく述べられている点,また,コラムではあるが,「文化と切り離された言語獲得」が困難であるとして外国人幼児の日本語獲得段階について紹介されているという点で,単なる言語教育者ではない年少者日本語教育者を目指すものにとっての必読書であると言える。

また,本編では子どもの言語発達理論に基づいて確立されてきた言語能力調査とその方法が多く紹介されている。ことばの遅れを早期発見するためのものが主であり,応用には慎重にならねばならないが,JSL児童の日本語能力測定法開発に参考となるところが多いと考える。 (小池愛)