論文解題

語彙調査

一二三朋子(1996)「年少者の語彙習得過程と言語使用状況に関する考察―在日ベトナム人子弟の場合」『日本語教育』90号. pp.13-24.

本論文は在日外国人児童の日本語語彙習得状況の特徴を把握し,言語使用状況を考察するため行った,語彙調査と言語環境に関する調査に基づく論文である。その調査から,来日年齢に関わらず来日後2年の間は習得段階の低く易しい語彙の習得が先行するという結果が出された。ただし,被験者の日本語学習の背景などが明らかではない中で,短い制限時間内に「か」を頭に持つ語を書かせるなどのわずかな語彙調査で,語彙習得の実態がつかめるのか疑問が残る。(I)

山口恵理(1998)「在日ベトナム人年少者の日本語・母語の語彙能力に関する一考察」『人間研究』34巻 pp.51-56日本女子大学教育学会

本論文は,在日ベトナム人年少者の日本語・ベトナム語の語彙力を分析し,小中学生年齢で,どのような言語力をもっているかについてまとめたものである。調査対象者(49名)を,滞在年や年齢で分類し分析しており,在日ベトナム人年少者の調査としては,大規模なものである。しかし,この調査には,言語の理解や運用という側面は含まれておらず,果たして「語彙力」を「言語力」と言えるのかという点に疑問が残る。(H)

松本恭子(1999)「ある中国人児童の来日1年間の語彙習得―発話資料のケーススタディ:形態素レベルの分析―」『日本語教育』第102号 p.68-77

ある中国人児童一人の自由発話を1年間縦断的に調査し,習得語彙を形態素レベルで分析した論文。品詞の習得順序,習得困難な品詞などが提示された。この調査結果を受けて日本語指導や在籍学級の授業での指導について提案がされているが,品詞レベルについてのミクロレベルの提案にとどまり,総合的な日本語力育成のための提案はされていない。(Y)

生田裕子(2001)「ブラジル人中学生の語彙の発達―作文のタスクを通して―」『日本語教育』110号 pp120-129

本論文は,ブラジル人中学生(67名)と日本人中学生(33名)の作文における語彙の使用実態と5つに分類された滞在年数をもとに語彙習得の発達を追究した論文である。日常生活から離れたコンテクストで用いられる語彙を観察することにより,学習に関わる言語能力の一端を把握しようとしているが,辞書使用可での調査の実施や,語彙のみによる言語能力の判断には疑問が残る。(S)