論文解題

内容重視

岡崎眸 (1994) 「内容重視の日本語教育 ― 大学の場合」『東京外国語大学論集』49号,pp.229-244

内容重視,学習者中心主義の日本語教育を提唱し,日本語教育に新しい視点を投げかけた論文。専攻科目への橋渡しとしての日本語教育ではなく,学習する内容を学習者に関連づけた教養教育としてのプログラムの可能性を提唱している。内容重視の日本語教育の考え方は,教科学習の土台となる日本語指導を目指す年少者日本語教育にとっても意義深い。(Y)

齋藤ひろみ(1998)「内容重視の日本語教育の試み-小学校中高学年の子どもクラスにおける実践報告-」『中国帰国者定着促進センター紀要』6号,pp.106-130

年少者日本語教育における「内容重視」のアプローチの有効性を示唆する論文である。この理論による実践では,学習意欲を喚起することがむずかしい年少者の学習意欲を促すことが容易であること,インターアクションを通した自然な文脈での日本語習得が可能である点が評価できる。しかし,中国帰国者定着促進センターという特別な環境のみではなく,実際の教育現場でも実践可能な方法論を示すことが今後の課題であろう。(M)

齋藤ひろみ(1999)「教科と日本語の統合教育の可能性―内容重視のアプローチを年少者日本語教育へどのように応用するか―」『中国帰国者定着促進センター紀要』7号 pp.70-91

本論文は日本語を学習する児童生徒が,思考の道具としてことばを使い,より早い時期から日本語で教科学習ができるようになることを目指した,「内容重視」のアプローチの日本語教育実践報告である。ここでは,習得に時間のかかる学習言語能力の育成のために,教科学習と日本語学習を統合したものを学習内容として,日本語があまり話せないような早い時期から導入する方法を模索している。さらなる実践研究が期待される。(M)

齋藤ひろみ(2000)「帰国児童・生徒クラスの『日本語と教科の統合学習』における教室会話の分析」『中国帰国者定着促進センター紀要』8号. pp.99-123.

体験やプロセスを重視した「内容重視アプローチ」の理念に基づき,教師,児童,児童間の相互作用の中での会話を分析した論文。教室内会話を,言語習得,教科学習,教室運営などの各話段に分け,それぞれの発話の機能を分析。その結果より,児童の意欲的態度,児童生徒間の相互作用の増加などの内容重視学習から得られた効果について述べ,児童の日本語教育が単なる言語教育に留まらないことを指摘できた論文である。(K)