論文解題
言語教育理論
縫部義憲(1993)「児童日本語教育学の構築に向けて(1)―現状と課題:広島県を中心に―」『広島大学教育学部紀要』第2部第42号 pp191-198
本論文は,広島に住む外国人児童生徒の現状から,日本語指導の具体的な段階や目標を提示し,そのうえで年少者日本語教育の基本的枠組みを構想しようとした論文として評価できる。ただし,日本人児童生徒と外国人児童との交流の必要性や学習段階と到達目標が掲げてあるものの,そこに至る過程は明示されておらず,やや抽象的な印象を与える。(S)
西原鈴子(1996)「外国人児童生徒のための日本語教育のあり方」『日本語学』15号p.67-74.
子どもの第一言語,第二言語の習得と学習についてのカミンズの説および学習心理学の理論を概観し,外国人児童生徒に対する日本語教育の進むべき方向性を示した論文。年少者日本語教育研究の歴史の浅い中,言語教育と教科学習の関連付けと,体験重視の学習の必要性を,理論的裏づけとともに訴えた点が意義深い。(Y)
岡崎敏雄(1995)「年少者言語教育研究の再構成―年少者日本語教育の視点から―」『日本語教育』86号 p.1-12
本論文では,年少者の第二言語習得研究に関する先行研究がわかりやすく整理されている。それらの先行研究は年少者日本語教育を考えていく際の基礎になるものばかりで,第二言語習得研究の流れと基本的な理論をおさえるためにぜひとも読みたい一本である。ただし,これらの先行研究・理論をもとに年少者日本語教育をどのように考えるのかという筆者の立場は明らかではない。(M)
齋藤ひろみ(2001)「『学習』を支える日本語能力の育成に向けて」『世界をひらく教育』Vol.23 全国海外子女教育・国際理解教育研究協議会 p.60-77
カミンズの理論的モデルおよびCALLA(アメリカのバイリンガル教育プログラム)の学習言語機能の枠組みを土台として,学習言語能力とは何か,それを伸長するにはどのような支援をすればよいのかという問題を議論した論文。理論的モデルから学習指導の現場に応用する具体的な枠組みを提供したことは年少者日本語教育の現場にとって意義がある。(Y)