論文解題
言語生活と言語教育
川上郁雄(1991)「在日ベトナム人子弟の言語生活と言語教育」『日本語教育』73号 pp.154~166
「インドシナ難民」である在日ベトナム人子弟の言語生活の実態を観察・面接を通して調査した論文。まだ,年少者日本語教育に関する研究があまりなされていなかった時代の論文として先駆的なものであるといえる。二言語・二文化にまたがっている子どもたちの母語や自己表現の手段としての言語とは何かを考えさせてくれる。(P)
関口明子(1994)「インドシナ難民の日本語教育―インドシナ難民児童の多様な言語背景と日本語習得―」『日本語教育』83号. pp.1-15
大和定住促進センターにおける児童日本語教育についての論文。そこで教育を担当してきた筆者が,児童の背景,カリキュラムについて紹介し,多様な言語環境のなかで臨界期を過ごす子どもの問題を述べる。実体験学習と教室学習に分けられた体系的言語学習を進めることで,四技能のバランスのとれた日本語取得を目指しているが,第一言語としての日本語確立を重要視し,母語保持の重要性については言及されていない。(K)
池上摩希子(1994)「「中国帰国生徒」に対する日本語教育の役割と課題‐第二言語教育としての日本語教育の視点から‐」『日本語教育』83号pp.16~28
中国帰国生徒への日本語教育を第二言語教育として捉え,BICSとCALPの関係を重視し,母語保持の必要性や彼らの置かれているさまざまな状況を踏まえた上で日本語教育は行われるべきであると述べている。その状況の一つとして,日本の学校文化を異文化として捉えることは「国際理解教育」の本質を考える点で参考になる。また,子どもたちが遭遇する問題点の論述やさまざまなネットワーク作りを提案しているなど,示唆に富んだ論文である。(P)
池上摩希子(1999)「実践報告 センター小学校低学年クラスにおける算数プログラムの設計」『中国帰国者定着促進センター紀要』第7号. pp.93-105.
日本語クラスにおけるカリキュラム開発過程についての論文。実践から得られた結果を開発にフィードバックしているため,現実的なプログラムである。学校生活や日常生活に必要な知識技能と学習活動に必要な知識技能を身に付けることを中目標とし,さらに各教科の達成目標まで細分化して目標を提示している。開発後のプログラム運用方法,児童の実態について詳細が欲しいところである。(K)