『年少者日本語教育実践研究』vol.2 (2004)
リンクのあるものは全文をご覧いただけます。
- はじめに
- 第1部 理論編――実践をどう考えるか
- 年少者日本語教育実践の観点――「個別化」「文脈化」「統合化」 / 川上郁雄
- 日本語指導者とクラス担任がいかに連携するか――小学校高学年在籍児童の教科学習指導を通じて / 間橋理加
- JSL児童のコミュニケーション能力育成をめざして―家庭支援における実例と考察 / 小池愛
- 年少者JSL教育におけるスキャフォールディングの必要性 / 齋藤恵
- 自律学習を目指した漢字指導の試み / 武蔵祐子
- 子どもの母語を生かした日本語指導の試み―韓国人児童の日本語指導を通して / 朴智映
- 来日間もないJSL児童生徒の内面的安定のための支援――2人の中国出身児童生徒の比較から / 飯野令子
- 中学生への日本語指導―学習支援をどう構築するか / 渡辺啓太
- JSL児童生徒のアイデンティティを考慮した指導――I市にあるペルー人学校での日本語指導を通じて / 坂田麗子
- 第2部 実践編――実践をどう行うか
- 子どもの語りを引き出す実践の試行 / 山田裕子
- 遊ぶこと・うれしいこと・つくること―その中で,言葉を考える / 山本冴里
- JSL児童の心とどう向き合うか―JSL児童と日本語支援者の関係構築にむけて / 森沢小百合
- 書く力の養成 / 鐘ペイチェン
- 児童を取り巻く状況の中で支援を考える重要性 / 矢本美和
はじめに
本報告書は早稲田大学大学院日本語教育研究科の実践研究科目「年少者日本語教育実践研究」(2003年度秋学期)の実践レポート集である。
この報告書は,昨年秋に発刊した「年少者日本語教育実践研究 vol.1」に続く2冊目の報告書である。前回の報告書が実践レポートを中心にしたものであった。その目的は早稲田大学大学院日本語教育研究科で初めて開設された科目「年少者日本語教育実践研究」の実践の記録を残すということであった。今回も同様の目的を持つが,それに加え,「実践の理論化」を進めることも目的にし,編集した。それが第一部の「理論編」である。これは,前回より引き続き授業に参加した院生が中心に担当した。それぞれの実践や研究を踏まえて,まとめたものである。続く第二部の「実践編」は5本のレポートがまとめられている。主に今期,本科目を受講した院生によるものである。それぞれ学校の状況や子どもの様子も異なるが,指導の内容がまとめられている。このように実践と研究が一体となっているのが,本研究科の特徴である。年少者日本語教育の「教員養成」の意味をもつ「早稲田モデル」として,今後もこのスタイルで行っていきたいと思っている。
このような実践研究を続けられるのも,新宿区教育委員会,区立小学校,中学校の先生方,関係者のご協力とご理解があればこそと感謝している。また,われわれの拙い実践研究につきあってくれる「日本語を母語としない子どもたち」にも感謝したいと思う。表紙にあるような「わにっ子クラブ」の活動もあわせて,年少者日本語教育学の構築へ向けて今後も努力を重ねていきたいと思う。
本教育実践に関して関係各位の忌憚のないご意見,ご教示を賜れば幸いである。
2004年3月
早稲田大学大学院日本語教育研究科
年少者日本語教育担当 川上 郁雄