『年少者日本語教育実践研究』vol.1 (2003)

  1. 表紙発刊にあたり
  2. 幼稚園における日本語指導・・・・・・・・・・・・・ 1
  3. 小学校における日本語指導・・・・・・・・・・・・・ 9
  4. 中学校における日本語指導・・・・・・・・・・・・・141
  5. 教材案の作成-小学校・・・・・・・・・・・・・・・199
  6. コミュニティ・スクールにおける日本語指導・・・・・219
  7. 「わにっ子クラブ」報告・・・・・・・・・・・・・・225

発刊にあたり

本報告書は早稲田大学大学院日本語教育研究科の実践研究科目「年少者日本語教育実践研究」(2003年度春学期)の実践レポート集である。

東京都のほぼ中央に位置する新宿区には,「日本語を母語としない子どもたち」が,毎年100名ほど編入学してくる。大学の近くにも,そのような子どもたちが見られる。そこで,本研究科では,昨年度(2002年度)新宿区教育委員会と「日本語教育ボランティア派遣」を趣旨とする協定を締結した。その協定により,昨年度から区立幼稚園,小学校,中学校からの要請により,本研究科の院生が学校や家庭へ日本語指導に出かけている。

実践研究科目「年少者日本語教育実践研究」は,このような経過を経て2003年4月に新設された。学生は,昨年度から開設された理論科目「年少者日本語教育研究」で「日本語を母語としない子どもたち」への教育について学んだうえ,この実践科目を受講し,実際に「日本語を母語としない子どもたち」を対象に日本語指導を行うのである。したがって,この実践科目は,年少者日本語教育の実習と教員養成の目的を持つ。

実践研究科目「年少者日本語教育実践研究」は,受講生が「日本語指導の要請」があった学校へ出かけ,学校や家庭で日本語指導を行い,その日本語指導実践を授業で報告し,クラス全体で「日本語を母語としない子どもたち」への日本語指導のあり方や方法論についてディスカッションするという形で進められている。報告される子どもの様子や日本語指導の方法が多様で,毎回熱のこもった討議が繰り返されている。

また,この授業の受講生はボランティア・グループ「早稲田こども日本語クラブ」(愛称,わにっ子クラブ:早稲田のわ,日本語のに,子どものこ)にも参加している。このわにっ子クラブは,「日本語を母語としない子どもたち」への教育支援を趣旨として昨年創設された学生サークルであるが,日本語指導のほかに2003年8月には「第1回わにっ子ワンデイキャンプ」を行った。詳しくは,本報告書末尾の報告書をご覧いただきたい。

大学が学校や地域と連携して行う教育実践の必要性はこれまでも指摘されてきたが,新宿区教育委員会のご協力により,このような教育実践が展開できることをわれわれは感謝している。また同時に,早稲田大学が地域に少しでも貢献できればと願っている。本報告書には,新宿区のほかにも,東京近郊の学校での実践レポートも収録されている。われわれは新宿区から全国を視野に入れた教育実践を行うことを目指し,今後も実践研究科目「年少者日本語教育実践研究」を継続していきたいと考えている。

本教育実践に関して関係各位の忌憚のないご意見,ご教示を賜れば幸いである。

2003年9月
早稲田大学大学院日本語教育研究科
年少者日本語教育担当 川上 郁雄