籔本容子のロンドン教育現場やぶにらみ

籔本容子(研究内容紹介

第6回 「読む力」と「イメージ」

クリスマス前のイベント,ハロウィーン

短かった秋が終り,もうすっかり冬景色となりました。木々の葉は落ち,夏には満開だった公園の花も,今ではすっかり様変わりしています。しかし,街では,また新たなイベントのための準備が始まっています。そうです,最大のイベント,クリスマスです。街のお店には,クリスマスのお菓子が既に並んでいます。そして,先日イギリス人の知人からそのミンスパイをいただきました。人々の気持ちもだんだんクリスマスに向けて盛り上がってきました。ロンドンの街のイルミネーションは,本当にきれいで,世界各地からそれを見にたくさんの人が集まってきます。是非一度クリスマスシーズンにロンドンへいらしてください。きっと,ロンドンの冬もいいなと思っていただけると思います。(写真:クリスマス前のイベント,ハロウィーン)

さて,今回は,「読む力」と「イメージ」というテーマでご報告します。筆者は,日本にいた頃,本研究室で,「JSL(Japanese as a second language)の子ども達」の「読む力」と「イメージ」の関係について興味を持ち,このテーマで修士論文を書きました(概要[PDF])。そして,現在,イギリスでもこのテーマを追い,実践をしています。「JFL(Japanese as a foreign language)の子ども達の読む力の育成」とでも言いましょうか。JSLの児童とりわけ「定住型児童(日本生まれや小学校入学以前に来日し,定住予定である外国につながる児童のことを言う)」において,「読み」の学習を行ううえで,有効性や可能性が既に示されている「カット・イメージ読解法」と「ピア・リーディング」の活動を,今回のJFLの児童生徒に対しても取り入れることにより,何らかの「読み」の効果が見られるのではないかと考えています。

日本の小学校でこの研究を行っていた頃は,目の前の子ども達にとって「読む力」をつけることが,彼らにとって早急に求められる重要な課題でありました。しかし,イギリスの今の日本語学習者は,とりわけ「読む力」に難を示しているという理由ではなく,単に彼らが日本文化に大変興味を持ち,彼ら自身が日本語を勉強したり,日本のマンガやアニメを自分で見たり読んだりしたいというレベルでの「読む力」という点で,筆者が日本で行っていた研究の対象者とは明らかに異なります。しかし,彼らのモチベーションは非常に高く,近い将来大学で日本語を専攻しようと考えている学習者も勉強しています。そのため,数回にわたり,「話す力」「聞く力」の育成と同時に,その活動に関連した「読む力」を伸ばすための活動も取り入れています。第一回目は,彼らの「読む力」がどのレベルであるのかを把握するため,既に日本で検証済みの教材を高校生用にアレンジし使用しました。まず,本の文章を提示し,その文章を読みながらその場面をイメージさせ,その場面状況にあったカットや絵を選ぶ活動です。本研究の詳細は,籔本(2006)をご覧ください。

こうした活動を通して,おおよその彼らの「読む力」を把握することができ,現在ではさらにその活動を進め,彼らの現在大変興味のある「マンガ」のカットと台詞を使って,「読む力」の育成にどう効果をもたらすことができるのかということを中心に,教材研究を行っています。

前回は,挨拶の場面を扱ったマンガのシーンを集め教材を作りました。それぞれの「あいさつ」の言葉からイメージされる場面状況を教材の中から選び,その会話のふきだしに「あいさつ」の言葉を入れ込んでいくものです。さらに,この教材は,逆の使い方もできました。それぞれの場面状況からイメージされる挨拶の言葉を考え,その会話を見つけるという活動も同時にできました。どちらの方法で行うかは,個々の学習者のストラテジーに任せることにしました。この教材に関して,今の時点で言えることは,「マンガ」教材は,彼らの「読む力」の育成を考えた場合,モチベーションを上げるのに,大変効果があったということでしょう。また,言葉や台詞から,実際の会話の場面や状況をイメージさせることにより,言葉の定着という点で大きく役に立っていると考えられます。さらに,こうした課題解決型の活動は,意図的に,文字や文を「イメージ化」させることに役立っており,「読む力」を育てる上で,何らかの効果をもたらすものと考えています。今の時点では,あまりはっきりとしたことは言えませんが,これからも同様のテーマで類似の活動を行いつつ,検証していきたいと思っています。

では,最後に今,私がとてもはまっている「ミュージカル」について紹介します。最近寒くなってきたこと,そして,日照時間が短くなってきたこともあり,夏のように公園等で,夜遅くまでのんびりと過ごすことができなくなり,人々の娯楽は,ミュージカルや芝居,コンサートなどの室内のものに変わってきました。そして私自身も例外ではなく,現在,週に1本のペースでミュージカルを見ています。そして,良かったものは,その後も何度も同じものを見て,その都度新たな発見をしています。お勧めの作品は,たくさんあります。個々に好みは異なりますのでここでは紹介しませんが,是非,ロンドンへいらっしゃった際には,一度ミュージカルを鑑賞されたらいかがですか。たった数時間の娯楽ですが,その後何日も幸せな気分でいられます。また,こちらの観客の方を見ていると,新たなロンドンの一面が見られることでしょう。

文献

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