籔本容子のロンドン教育現場やぶにらみ

籔本容子(研究内容紹介

第4回 ひらがなの文字指導

7月上旬から,イギリスの子ども達は,サマーホリデーに入りました。私が授業を行っていた小学校の子ども達も同じです。Refugee Club(難民の子ども達の教育支援)の子ども達も学校が休みになったせいか,表情に開放感があります。長い夏休みを思いっきり楽しみ,いろいろな体験をして,さらに大きくなった子ども達に会えることを楽しみにしています。

さて,今回は,ひらがなの文字指導を紹介します。今から紹介する文字指導の授業は,小学校,Refugee Clubの両校で行ったものです。両校では,対象の年齢,人数,子ども達の背景等,大きく異なりますが,どちらのクラスでも子ども達の興味をひきつけ,子ども達が熱心に取り組む姿が見られました。では,その様子を紹介します。

ここの小学校では,第一回目の授業で,ひらがなの「あいうえお」の勉強をしました。その際,「あり」の「あ」,「いぬ」の「い」と,日本の小学校一年生の授業で扱う,物の名前の一部の音と,ひらがなの文字を対応させ文字指導を行いました。しかし,絵を使って意味を示しつつ音と文字を示したにもかかわらず,彼らにとっては,語彙自体が新しいという理由から,イメージしづらく,学習したことが定着しないという問題がありました。

こうした背景から,今回の「は行」,「ま行」の学習の際には,彼らの母語である英語の語彙の一部の音とひらがなの文字を対応させて,導入を行いました。この方法は,オーストラリアのJapanese course book『mirai stage 1』等で紹介されているひらがな指導の方法です。また,『Virtual Hiragana Class in One Week』でもこの方法で文字指導が紹介されています。両者は,母語の語彙の音と,ひらがなの文字を組み合わせて示しているという点で共通しています。こうした文字指導が,目の前の子どもの思考に合っていると考え取り入れることにしました。

「ま行」導入時の提示教材「mother」の「ま」,「meat」の「み」,「moo」の「む」,「medal」の「め」,「motorcycle」の「も」のように導入したところ,子ども達は,「mother」「ま」,「meat」「み」と三拍子に合わせてリズムに乗って意欲的に発話をし,ノリが非常によかったと言えます(写真:「ま行」導入時の提示教材)。

また,自分から意欲的に繰り返そうとする彼らの様子から,目の前の子ども達にとって身近な語彙を使った文字指導が,興味・関心,学習の定着という点で,有効であるということが,あらためてわかりました。また,この授業を一緒に見てくださった先生から,三拍子のリズムを活かして,さらにチャンツのリズムに合わせて,遊びの中で文字指導を取り入れていくと面白いのではないかという提案があり,年少者の子ども達の文字指導を考える上で,遊びの延長線としての日本語指導をさらに検討していく必要があると感じました。

練習用のワークシートまた,今回は,ひらがなの導入後,筆ペンを使って文字の練習をさせました。初回の文字指導の際,私が,筆を使って文字を板書したところ,子ども達は,筆に大変興味を持ち,自分達も使いたいという要望があったため,今回,全員に筆ペンを渡して,筆の感覚を体験しつつ,文字を練習するという活動を取り入れました。子ども達は,筆ペンを使って文字を書くことに大変興味を持ち,とても丁寧に一字一字書いていました。また,筆を使うことにより,筆順の重要性についても自然と気付くことができるという点で意味のある活動であると考えています。今後も子ども達の興味や願いを敏感にキャッチし,子ども達の日本語学習に対するモチベーションを上げつつ指導していくことにより,さらに学習効果を上げていきたいと考えています。(写真:練習用のワークシート)

Regent Parkの様子最後に,今回は,私の家から5分ほど歩いたところにある,Regent Parkについて紹介します(写真:Regent Parkの様子)。ここは,ロンドンの大きな公園の一つで,flower gardenや,動物園,競技場,大きな池などがあります。家族や恋人達が仲良く語り合ったり,犬の散歩をしたり,ジョギングをしたり,様々な目的でロンドンの人々はこの公園にやってきます。イギリスの人々が自分達の生活の中で公園をとても重要と考えていることが,ここロンドンに住んでいると感じることができます。私もここでのんびりと過ごすことにより,イギリスの人々の生活をゆったりと体験しています。ロンドンの夏は,夜の9時半頃まで明るいので,最もすばらしい時期と言えます。夏の後半から徐々に日が短くなるため,今,ここの人々は精一杯夏を楽しいでいるところです。

導入教材を作る上で参考にした文献

  • KCP学園・KCP地球市民日本語学校(2007).『Virtual Hiragana Class in One Week』凡人社.

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