活動の報告 > 第12回ワンデイキャンプ

第12回 わにっ子ワンデイキャンプ報告

はじめに

2008年12月13日土曜日,第12回わにっ子ワンデイキャンプが開催されました。19名の子どもたち(幼稚園児1名,小学生14名,中学生4名)と21名のボランティアが参加し,元気いっぱい,楽しく活動しました。今回のキャンプでは,これまでの「劇づくり」「絵本づくり」といった枠組みから離れ,読解指導にしばしば用いられる「ジグソー・リーディング」にヒントを得て,「わにっ子事件」の犯人を探すという活動を行いました。

以下,その詳細をご報告いたします。

1.第12回わにっ子ワンデイキャンプのコンセプト

第6回目より,わにっ子ワンデイキャンプでの活動は「絵本づくり」「劇づくり」が定番となってきました。それらの活動を通して,「ことば」を軸に伝え合う力や表現力の育成,関係性の構築などが目指されてきました。しかし,3時間という限られた時間の中で,ストーリーやセリフを考え,衣装や小道具などを作り,練習をして発表をすることは簡単なことではありませんでした。子どもたちにとっては,発表会が活動する上での動機付けになっていたと考えられる反面,発表のための活動になってしまう,ひいては発表の出来がその日一日の評価につながりかねないという問題点が挙がりました。

そこで,今回は「絵本を使って何をするか」ではなく,「何を目指すのか」というところから企画を始めました。そして,私たちは主に以下の点を重視することにしました。

  • 四技能(聞く・話す・読む・書く)をバランスよく使った活動
  • 動き,やりとりが多い活動
  • 最後はみんなで共有し,一体感が感じられる活動
  • 発表のため(結果重視)の活動ではなく,プロセスを重視した活動

活動の内容

前述のコンセプトのもと,今回は「わにっ子事件の捜査(わにっ子事務所から金庫を盗んだ犯人を探す)」という活動を行いました。子どもたちが警察官となり,容疑者3名と目撃者2名から事情聴取をし,集めた情報を照合して犯人を突き止めるという活動です。活動の流れは以下の通りです。

(1) 全体活動
ホーム・グループのメンバーを確認する。
ニュースを見て,わにっ子事件について概要を知る。
(2) グループ活動A
エキスパート・グループで,容疑者あるいは目撃者に事情聴取をする。
(3) グループ活動B
グループ活動Aで収集した情報をホーム・グループに持ち帰り,他のメンバーに伝える。それぞれの情報を照らし合わせ,犯人を突き止める。
(4) 全体活動
真犯人判明,事件解決。戻ってきた金庫の中には,子どもたちへのクリスマスプレゼントが…。

エキスパート・グループとホーム・グループの活動図図.エキスパート・グループとホーム・グループの活動図

この活動では,以下のように子どもたちには,四技能全ての力を使うことが求められます。

  • 聞く力…ニュース,証言,仲間の話を聞き,情報を集める。
  • 話す力…取調べで関係者に質問する。また,自分が持っている情報を仲間に話したり,話し合いで自分の意見を言ったりする。
  • 読む力…ホワイトボードに書かれた情報を読み取る。
  • 書く力…得た情報を警察手帳やホワイトボードに書く。

さらに,子どもたちには「伝え合う力」も求められます。ホーム・グループで事件を解決するためには,子ども一人ひとりがエキスパート・グループで得た情報をしっかり伝えなくてはなりません。

捜査本部で情報収集写真.捜査本部で情報収集

上記のように,活動の中には四技能全てを含む様々な言語活動を取り入れました。犯人究明のためには,子どもたち全員に,エキスパート・グループで必要な情報を集め,それらをホーム・グループで的確に伝えるということが求められました。これは,全員が越えなければならないステップです。どの子どもも,自分がエキスパート・グループで得た情報をホーム・グループで責任を持って伝えることができました。加えて,話し合いでは進行役や書記係といった役割や,得られた情報の中から犯人を推測する力が求められました。そこではまさに,それぞれの子どもがそれぞれのレベルで力を発揮し,参加していました。

容疑者の一人は,見るからに怪しいサングラスをかけた男性で,子どもたちは当初みんな彼のことを疑っていました。しかし,関係者から事情聴取をし,証言もとに話し合いをしていくうちに,根拠をもって真犯人を突き止めることができました。無事犯人が捕まり,ご褒美のプレゼントを受け取った時,どの子も満足げな顔をしていたのが印象的でした。

容疑者への取調べ写真.容疑者への取調べ

3.ボランティアとの協働

今回のワンデイキャンプも,ボランティアの方々には積極的に関わっていただきました。事前のボランティア研修においては,私たち院生だけでは出てこなかっただろう意見やアイディアをいただき,企画をさらに練り上げることができました。

前回に引き続き,ボランティアの方にアイスブレーキングを担当していただきました。今回のアイスブレーキングでは,前回の企画ボランティアの方たち考案の「わにっ子じゃんけん」と「おおかみがり」を今回の活動のためにもじった「どろぼう探し」を行いました。ボランティアの活躍のおかげで,参加者全員が元気よく体を動かすことで,緊張がほぐれ,本活動につなげることができました。

また,今回の活動は,ボランティアの協力無くして成立しませんでした。自ら悪役を買って出てくださった容疑者の方や目撃者に扮して証言をしてくださったボランティアの方には,大活躍していただきました。その他のボランティアにも,「先輩刑事」として,事件解決に向けて子どもたちをうまく導いていただきました。そして,大人も子どもも,参加者全員が,事件解決のために一丸となって活動できたように思います。

ボランティアの方々からは,活動について,「楽しかった」「子どもとの関わりを通して,いろいろな気づきや発見があった」「ボランティア研修での話し合いを参考に子どもたちと接した」など,前向きなコメントを多くいただきました。また,子どもたちの様子について,「とても楽しそうだった」「積極的で生き生きしていたのが印象的だった」「発想の豊かさに驚かされた」などのコメントをいただきました。一方で,「日本語母語話者と日本語日母語話者のボキャブラリーの差が大きく,サポートに苦労した」「幅広い年齢の子どもたちを一緒に活動させるのが難しかった」などのご意見もありました。その他にも,今後の参考になるご意見,コメントを数多くいただきました。どのコメントからも,ボランティアの方々が積極的に関わってくださった様子が窺え,大変嬉しく思います。

今回の活動では,キャンプ当日における「今,この場」を作るという面で,私たち院生とボランティアとの間で一体感ができたのではないかと考えます。

4.今後に向けて

今回のワンデイキャンプには,幼稚園児から中学3年生までの幅広い年齢層の子どもたちが参加してくれました。そして,その子どもたちの母語は日本語であったり,そうでなかったりします。つまり,多様な認知レベル,言語レベルの子どもたちが一緒になって活動するわけです。今回,私たちはそれぞれの子どもたちがそれぞれのレベルで参加できる活動を目指しましたが,それは容易なことではありません。ボランティアの中からは,子どもの背景についてもっと情報があれば,もっとうまくサポートできたかもしれないというご意見もいただきました。確かに,「子どもたちをサポートする」という観点に立てば,必要なことかもしれません。

では,うまくサポートするために,私たちはどの程度子どもたちの背景を知っていればよいのでしょうか。答えは出ないでしょう。相手の背景を知ることから関係を作るのではなく,関係性を築きながらお互いのことを知っていくのですから。このような力は,国や言語を超えて人々が移動し,周りに様々な背景をもった人たちが暮らしている現代に生きる私たちに求められている力です。その意味で,3時間という短い時間の中で出会い,知り合い,情報を共有しながら一緒に活動した今回の活動には意義があると考えています。

おわりに

第12回わにっ子ワンデイキャンプは,ボランティアとしても活躍してくださった「エフロケッツ」の皆さんによるリコーダーのクリスマス・ミニコンサートで幕を閉じました。奏者たちの粋な演出と昔懐かしいリコーダーの心地よいハーモニーで,みんなの心はポカポカ温まったことでしょう。

今回,これまでのワンデイキャンプの活動に対する反省から,新たな活動に挑戦することになり,企画段階からワンデイキャンプ当日まで,私たちは,期待と不安でいっぱいでした。活動主旨に賛同してくださり,参加してくださったボランティアの方々のおかげで,私たちの不安は払拭され,期待を形にすることができました。本当にありがとうございました。

限られた時間と空間の中で展開されるワンデイキャンプでできることには限界があります。しかし,だからこそできることもあります。出会い,知り合い,力を合わせてひとつのことを達成しようとする体験がわにっ子ワンデイキャンプの醍醐味と言えるのではないでしょうか。ここでの出会いと体験が次につながることを願っています。

第12回わにっ子ワンデイキャンプスタッフ一同(文責:浅井 涼子)