13.日本語教育学会春季大会で「鈴鹿モデル」のパネルセッション

「学校現場の日本語教育支援システムをどう築くか ― JSL児童生徒のための「鈴鹿モデル」の挑戦」

日本語教育学会2009年春季大会では,パネルセッション「学校現場の日本語教育支援システムをどう築くか ― JSL児童生徒のための「鈴鹿モデル」の挑戦」を行います。

水井健次・鈴鹿市教育長をお招きし,当研究室出身の中川智子・鈴鹿市教育委員会日本語教育コーディネーターとともに,「鈴鹿モデル」について熱く議論する,全国の自治体が注目するパネルセッションです。

ねらい

近年,小中学校等に在籍する「日本語指導が必要な外国人児童生徒」数が25,000人を超え(文部科学省調査2007年度),これらのJSL児童生徒への日本語教育の課題が参議院の調査会「少子高齢化・共生社会に関する調査会」や自民党の小委員会においても議論されるほどに社会的,教育的課題として広く認識されるようになった。しかし,これらのJSL児童生徒への教育に対して国の施策はまだ十分とは言えず,日本語指導が必要な子どもたちが今後ますます増加することが予想される中,限られた財源の中で,教員・指導者の確保,教育内容と方法の確立,指導者ネットワークの形成等の年少者日本語教育支援システム構築をどう進めるかが喫緊の課題となっている。

鈴鹿市では2008年度より大学との協定にもとづき,市内のJSL児童生徒への日本語教育支援システムの構築を開始した。その協定の柱は,

  1. 日本語教育コーディネーターの設置
  2. JSLバンドスケールの導入

である。2008年4月より,市教育委員会では教育長が率いる「日本語教育支援システムプロジェクト会議」,そのもとに「日本語教育担当者ネットワーク」が組織され,そのどちらにも日本語教育コーディネーターが関わり,市内の日本語教育実践の指導・助言・提案の役割を果たしている。また,2008年7月に鈴鹿市内のJSL児童生徒,約500名の日本語能力をJSLバンドスケールで把握する調査を実施し,その結果に基づき日本語指導の内容と方法を検討し,実践を行い,教育的効果を上げている。この調査にも日本語教育コーディネーターの指導力が発揮された。

本パネルセッションでは,年少者日本語教育の専門的知識と教育実践経験等を有する日本語教育コーディネーターが日本語教育支援システムに果たす役割と意義は何かを中心テーマに,鈴鹿市の試みる日本語教育支援システムをひとつのモデルとして日本各地の学校現場に導入するための教育行政的な視点と意義は何かを議論し,さらに,その議論を踏まえて,JSL児童生徒を含むすべての子どもたちの「学力保障」につながる「ことばの教育」の創造を国の政策立案に提案するために,日本語教育に関わるものは何を果たすべきかを議論することを目的とする

構成: 趣旨説明と4つの発表

  1. 池上:パネルの趣旨説明
  2. 水井:鈴鹿市教育長がどのような現状認識と理念から日本語教育支援システムを構想したのか,また2008年度の実績と今後の3ヵ年計画をもとに,JSL児童生徒に関する,地方の教育行政の戦略と課題を述べる。
  3. 中川:2008年度から採用された日本語教育コーディネーターが日本語教育支援システムの中でどのような役割を果たし,年少者日本語教育の実践を展開したのかを述べ,日本語教育コーディネーターの意義を提起する。
  4. 川上:鈴鹿市の日本語教育支援システム構築に関わる大学の立場から,地域における日本語教育支援システムの中で,学校,教育委員会,大学がどのように協働的に日本語教育実践を展開し,「ことばの教育」を内実化するのかを述べる。
  5. 野山:以上の発表の論点を踏まえたうえで,これまで全国で展開されているさまざまな日本語教育ファシリテーター論と鈴鹿モデルを比較し,地域で構築する支援ネットワークの要点を日本語教育的観点から論じるとともに,日本語教育学が国の言語教育政策立案に何を果たすべきかについて問題提起を行う。

発表後の議論の方向性

鈴鹿モデルを例に,

  1. 学校教員への支援と研修
  2. JSL児童生徒の日本語能力把握の方法と日本語教育学的実践の学校への導入
  3. 「学力保障」につながる「ことばの教育」の創造

の3点について議論を行い,地域で展開する年少者日本語教育支援システム構築の方法論と意義を抽出し,国の言語教育政に対する日本語教育学の社会的意義と貢献の可能性を考える

大会を終えて

さる2009年5月23日(土),明海大学で行われた大会で,水井健次・鈴鹿市教育長,中川智子・日本語教育コーディネーターを招いたパネルセッションが2時間,行われた。

水井教育長は教育委員会と早稲田大学の間の3年間の「協定」により日本語教育コーディネーターの設置と,JSLバンドスケールの導入により,初年度にあたる昨年度,どのような成果があったか,またそれを踏まえて,今年度どのような重点項目を考えているかを教育行政のトップとして報告した。会場からは教育長が学会発表するのは初めてではないかという意見が出され,拍手が沸き起こった。

続いて,日本語教育コーディネーターの中川智子氏は,日本語教育コーディネーターの専門性と役割についてビデオを交えて報告した。それにつづき川上(早稲田大学)がこの支援システムへの大学の役割について述べ,最後に野山広氏(国立国語研究所)が年少者日本語教育における鈴鹿モデルの意義を述べた。

JSL児童生徒の「ことばの力」に焦点をおくことによって,教育委員会,学校,大学が「連携」することを示したパネルセッションであった。司会は池上摩希子氏(早稲田大学),参加人数は120名であった。