鈴鹿市立神戸小学校
訪問日 2008年9月19日
1.神戸小学校の概要
神戸小学校には,現在,全児童数の約5%にあたる40名ほどの外国籍児童が在籍している。この数が3年後の平成23年度には2倍の80名になることが分かっている。就学前ガイダンスでは,母語ができる先生が通訳をしたり,「先輩保護者」が経験談を話す場を設けたりすることによって,保護者の不安を解消する取り組みを行っている。
2.国際教室「ふれあい」を見学して
平成8年に教員が配置されて以来「ふれあい」で日本語指導が行われている。現在,「ふれあい」には3名の先生がいらっしゃり,在籍する外国籍児童40名のうち半数近くの児童が週2~3時間程度取り出され,日本語指導を受けている。
「ふれあい」における授業では,在籍学級との「連動」を目指し,主に文字(仮名・漢字),音読の指導が行われていた。「1,2,3,4」と先生の掛声に合わせて子どもたちが楽しそうに「空書き」したり,元気に音読したりしていた。母語が話せる先生と一緒で,子どもたちは安心して勉強できるのではないだろうか。
授業後,「ふれあい」の先生,川上教授,私たち院生で教材や指導法について時間をかけて協議することができた。何のための活動なのか,ねらいと教材・活動が合っているか,認知レベルに合わせた認知的活動をさせているかなどについて意見とアイディアを出し合った。
3.在籍学級を見学して
「ふれあい」での様子を見させていただいた児童が在籍する1年生と5年生の授業を見学させていただいた。1年生の授業は算数で,三つの数の足し算(3+2+4)の導入だった。授業は,先生が勢いよくはじく百玉そろばんの玉の数を,子どもたちが目を閉じ,耳を澄まして数えるということから始まった。子どもたちが「ぼくが一番!」と言わんばかりに答えを言い合っている中で,JSLバンドスケールレベル1の女の子が目を閉じて一生懸命数を数えている様子も見られた。その他にも問題文を表した絵を黒板に貼ったり,児童に電車ごっこをさせながら考えさせたりするといった意匠を凝らした楽しい授業だった。5年生の授業は家庭科で,次回に行われる調理実習に向けて野菜の切り方や調理器具の使い方などを学習しているところだった。JSL児童に対する先生からの声掛けの仕方やその頻度の高さが印象的だった。
どちらの授業でも,先生が視覚的補助の使用,声掛け,言い換えなどを自然になさっており,まだ教科内容を理解するのは困難なJSL児童が楽しそうに授業に参加する場面が見られた。
4.校内研修会
校内研修会では,在籍学級の先生方から出された「日本語能力の低い児童を在籍クラスで学ばせる意義」「日本語能力の低い児童に対する在籍クラスにおける具体的な指導法」「JSLバンドスケールの使用法」「日本語初期指導1年目の到達目標とその方法」といった問題提起や質疑をもとに活発な議論が行われた。
先生方からは,教科内容が理解できず苦痛なのに在籍学級で授業を受けさせるべきか,JSL児童に合わせることによって他の児童に影響が出ないか,自分なりに工夫して指導しているがこれでいいのか,無理強いしていないかなどの不安の声が挙がった。しかし,前項で述べたような教室実践の他にも,ある部分は参加させ,難しそうなところは別課題(教科内容の難易度を下げたものや日本語学習に関するものなど)を与える,声掛けをする,クラス全体でサポートできるような関係づくりを築くなど,先生方がすでに素晴らしい実践や支援をなさっていることも分かった。先生方の実践や支援のポイントを日本語教育と「ことばの力を育む」という視点で川上教授が示し,先生方とともに支援のあり方を確認した。
5.感想
見学させていただいた授業や,校内研修会で示してくださった具体例のように,現場の先生方は日ごろの実践の中で,視覚的補助を用いる,声掛けをする,簡単なことばに言い換える,リライト教材を使う,時には別課題を与えるといったJSL児童の支援の上で有効な手続きをなさっていた。それらの手続きは,常に30人以上の子どもたち相手にしている現場の先生方にとっては,当たり前のことかもしれないが,重要なのは,それらを「ことばの教育」という視点でとらえ直すということだと思う。そのような支援があることによって,例えばレベル3のJSL児童もある部分では参加することが可能となり,完全な「お客さん」ではなくなり,やる気や自信へとつながっていく。
在籍学級の見学では,実際にそのような場面を目の当たりにした。在籍学級でしか学べないピア同士の学びがある。その学びが起きるような仕掛けをたくさん作るためにも取り出しと在籍の連携が重要だと感じた。
(報告者 浅井涼子)