鈴鹿市立 河曲小学校
訪問日 2008年9月17日
1.河曲小学校の概要
河曲小学校では,全児童数の8.7%にあたる50名ほどの外国籍児童が在籍している。国籍内訳を見ると,ブラジル,ペルーといった南米系が大半を占めており,定住型の児童も多い。1年生のうちからしっかりと日本語を身につけさせて学力向上へということで,日本語指導に力を入れている。
2.国際教室「アミーゴ」
国際教室,その名も「アミーゴ(スペイン語で「友達」の意)」は,平成11年に開設された。教室がずらっと一列に並んだ長細い校舎の真ん中に「アミーゴ」はあった。休み時間になると廊下から「入ってもいいですかー?」という元気な声が聞こえてくる。声の主はJSL児童だけではない。子どもたちが自然に集まってきて,思い思いの時間を過ごしていく,そんな居心地のいい「アミーゴ」。教室内は,先生や子どもたちが作った掲示物がたくさん貼ってあり,とても明るく楽しい雰囲気だった。
「アミーゴ」では3つの授業を見学させていただいた。授業はそれぞれ,子どもたちの日本語レベルに合わせて,身近な話題を取り扱ったり,教科内容を取り扱ったりして行われていた。中でも印象的だったのは,初期指導の授業である。学校生活に密接した話題が取り上げられ,子どもたちは仲間と助け合ったり,先生に助けてもらったりしながら,絵を見て,考え,発信するということをしていた。
「アミーゴ」の先生は,子どもたちに自分のことや自分の気持ちが言えるようになってほしいとお考えで,授業の中でそのような話題を取り上げたり,気持ちの表現に関するポスターを壁に貼ったり,絵カードを用意したりなさっていた(参考URL:感情ポスター「いまどんなきもち?」)。自分のことについて話すということは,初期指導の中でも最も重要なことの一つである。先生が話してくださった,「先生,今ぼく,これです。」と怒っている顔のカードを指さしながら訴えてきた子どものエピソードは,とても興味深かった。自分の気持ちを表すことばや伝える手段があるだけで,どんなに気持ちが楽になるだろうか。相手に自分の気持ちを伝える,相手が自分のことを分かってくれるというのは,JSLの子どもにとってとても大切なことである。
3.校内研修会
校内研修会は,JSLバンドスケールの使用に関する話題から具体的な子どもの事例へと広がり,子どもたちが抱える問題や指導上の留意点に関する協議がなされた。
JSLバンドスケールで子どもたちの日本語能力を把握したことによって,「自分が認識できていなかったことに気づいた」とおっしゃる先生。それは,4技能のバランスの悪さに気付いたということである。聞く・話すはできるが読み書きができない子ども,読む・書くはできるが自分から話そうとしない子ども,他の3技能はある程度できるが書くことを嫌がる子どもなど,子どもの日本語能力が一つの側面から測れないということを,具体的な例を挙げながらおっしゃっていた。そして,JSLバンドスケールの測定結果を数値で出すことが目的なのではなく,その場その場で日本語能力を判断し,測定結果から指導法を考えていくことが目的なのだということを確認した。
4.感想
日本語の授業の中で,子どもたちが「うーん」と静かに考えを巡らしたり,言いたいことが言えないともどかしそうな顔をしていたのが印象的だった。また,終了のチャイムが鳴り,早く帰りたい男の子が,まだ準備ができていない女の子たちをじれったく感じて地団駄を踏んだ時,先生が横から透かさず「早くしてって言うんだよ」と教えていた。ことばは意味のある文脈で学ばれる,言いたいことが言えた時,そのことばはその子のものになるのだということを改めて実感した。
「アミーゴ」の先生と教材や指導法について協議できたのも貴重な体験だった。「アミーゴ」の教材や教具,掲示物などから,たくさんのいいアイディアと刺激をいただいた。
(報告者 浅井涼子)