鈴鹿市立 一ノ宮小学校
訪問日 2008年9月16日
1.一ノ宮小学校の概要
学校教育目標を「つながりあい 高めあう 心豊かで たくましい子の育成」とする一ノ宮小学校には,現在,全児童数の約6%にあたる40名の外国籍児童が在籍している。そのうち,15名が国際学級で取り出し支援を受けている。
一ノ宮小学校に在籍する外国籍児童の特徴としては,生活言語能力は比較的高いが,学習に必要な言語能力が育っていない子どもが多い,そして新たに編入してくる子どもが多いということがあり,今後も外国籍児童が増える可能性は充分にある。
2.在籍学級の様子
初日に訪問させていただいた一ノ宮小学校では,限られた時間ではあったが,国際学級で支援を受ける子どもの在籍学級での様子を,沢山見学させていただくことができた。1年生から6年生まで,算数,理科,学級といろいろな時間の様子を見学したが,印象的であったのは,どの授業でも,担任の先生が積極的に子どもたちに声かけをされていたことである。その方法も,さりげなくであったり,冗談めかして,他の子どもの注意もひきつけながらであったりと様々であったが,とても自然で,その風景が,クラスになじんでいるようであった。担任の先生がそうした,自然にフォローする雰囲気を作ることで,まわりの子どもたちも,自然に声をかけやすくなっているのではないかと感じた。それによって,確かに一斉指示の理解は遅い子どもや,算数などの学習についていくのが難しそうな子どももいたが,「置いていかれている」という様子では決してなかった。また,校長先生と子どもたちの距離も近く,学校全体で子どもたちを包んでいるような,温かい雰囲気が印象的であった。
3.国際学級の様子と,教材検討
在籍学級をゆっくりと見学させていただいたため,国際学級の様子はあまり見学できなかったが,リライト教材を使って勉強する6年生の様子を少し見せていただいた。先生と向かい合って座り,集中して取り組んでいた。授業終了後に先生にお時間をいただき,国際学級で使っているリライト教材についてのお話を伺い,また,院生で用意していったリライト教材の検討を行った。国際学級では,たとえば3年生は分かち書きやルビをふったもの,6年生は物語の要約リライトというように,学年に応じたリライト教材を使用しており,在籍学級の授業の前に,まず国際学級で慣らしておくことをねらいとしているという。しかし,リライト教材に慣れすぎてしまうと,教科書とのギャップに戸惑ってしまう子どももいるという。こうした先生のお話を伺うことで,リライト教材の存在意義や,位置づけを考え直すとともに,リライト教材はただ作ればいいというものではなく,その導入のしかたや,子どもの理解をどう得るかといったことを考える重要性をあらためて実感することができた。
4.校内研修会
校内研修会には,多くの先生方が出席され,担任の視点から捉えている子どもの様子,悩みなどが積極的に出された活発なものとなった。
1年生の教室からは,学習に集中することが難しく「ひらがな」がまだ読めない子どもに学習意欲を持たせるため,教科書から離れ,興味のある「虫」をテーマにクイズ作りをした実践例の報告があった。3年生の様子では,「友達とはうまく話しているし,グループワークもしているけど,なんとなくみんなに合わせている様子で,意欲が感じられない」という話,4年生では「親の都合で,子どもの将来が不透明なままである」ことへの危惧を抱く先生や,外国籍児童への声かけだけでなく,まわりの子にも理解を促す声かけが必要と考え,実際に道徳の時間にみんなで「言葉が通じない」体験をした活動例を報告された先生の話があった。6年生では,修学旅行などを通して,まわりとかかわる時間が増えることで自然とつながっていく可能性もある,という話もでた。
こうしたお話に対して,川上先生から,「子どもの目線にたち,『誰かに伝えたい』と子どもが思えるような文脈を作ること」や「一人一人に声をかけ,考えさせる,個別の課題を与えること」の重要性,「まず関係性があり,そこから言葉がうまれる」ということ,そして「定住型児童」への支援についてなどの話があり,先生方との活発な議論が展開された。
5.感想
授業見学,教材検討,そして校内研修会を通して強く感じたことは,先生方が子どもを温かく見守っているということであった。たとえば子どもの将来が不透明であることを心配したり,子どもにあわせて活動を考えたりするということは,それぞれの子どもを丸ごと受け止めていなければできないことである。その上で,過度でなく,とても自然な範囲で声かけをされていたのが印象的であった。また,子ども同士のつながりあいを大切にされている先生も多く,学級の子どもたちの様子を見ても「つながりあい 高めあう」ことが実践されている,と感じることができた。こうしたことは,外国籍児童がことばを学ぼうとする,とても重要な前提となることである。
リライト教材や,在籍学級と国際学級のつながり,先生方の連携など,課題はまだまだあるだろう。どこの現場でも,課題となっているところであり,簡単なことではない。しかし,その前提となる部分,子どもと先生,子どもと子どものつながりあいができているということは一ノ宮小学校の大きな強みではないだろうか。
(報告者 大森優)