書評『海の向こうの「移動する子どもたち」と日本語教育』

グローバルな日本語教育の研究や実践をしていく者のための必読の書!

フックス清水美千代(スイス:バーゼル日本語学校教諭)

グローバル化が急速に進行する中で,海外で教育を受ける日本の子どもたちが年ごとに増大している。帰国子女問題がマスコミを騒がせた時代は過ぎ,海外を渡り歩かざるをえない子どもたちが珍しくない時代がやって来ている。本書は,そうした現今の問題に注視し,その実態を把握し,さらに,今後の日本語教育がどうあるべきかということを探ろうとした研究書として画期的である。

海外で日本語の学習をする子どもたちを一つ一つのカテゴリーの中にとらえず,多様性をそのまま把握し,今後の日本語教育に貢献していこうという姿勢には,現実をとらえた新鮮な研究の意義がある。

「今,『移動する時代』に生きる子どもたちに必要な日本語教育の実践を新たに構想する時期に来ている。それは,子どもたちではなく,日本語教師自身が時代の変化にどう対応したらよいかが問われているのである。」という編者の言葉は世界各国で子どもたちに日本語を教える者が,只今,考えなければならない問題を率直に提起している。

本書は,「動態性の日本語教育」「日本国外の年少者日本語教育について」「外国語教育としての日本語教育を問う実践報告」というテーマのもと,世界の子どもへの日本語教育において,現在当面する重要な問題が提起され,また報告されている。日本国内外で子どもに日本語教育を教える者やその関係者のみならず,日本語教育研究者また日本語教育関係者すべてに,このような現在進行中の,世界にまたがる日本語教育の様相を捉えてもらい,今後の日本語教育の研究および実践に貢献してもらいたいと切に願わざるを得ない。

この書は編者のいう「移動する子どもたち」を理解し,現在,解決していかなければならない日本語教育について学び,さらにグローバルな日本語教育の研究や実践をしていく者のための必読の書となっている。

表紙:『海の向こうの「移動する子どもたち」と日本語教育』『海の向こうの「移動する子どもたち」と日本語教育 ― 動態性の年少者日本語教育学』
  • 川上郁雄(編・著)
  • 明石書店より2009年09月刊
  • 3,465円(税込),246p,21cm,ISBN:978-4-7503-3061-7