日本語教育国際研究大会2006 発表報告

コロンビア大学にて

われわれのパネルセッションは,日本における「日本語を母語としない子どもたち」(JSLの子どもたち)をテーマにしたものであったが,このようなテーマのパネルセッションがアメリカの学会で行なわれるのは,おそらく初めてであった。そのため,60名以上の参加者があり,各報告について多くの質問が会場から出された。最後の議論では,時間を10分以上オーバーするなど,多くの方々の関心を集めた。

発表日本のJSLの子どもの現状を,制度や政策,学校現場における実践,さらに子どもたちの日本語能力の実態など多角的に報告できたことや,さらに米国におけるESLの子どもへの政策や教育の実状と比較検討できたことは,今回のパネルセッションの大きな成果ではなかったかと思われる。

ただし,現状の報告と比較検討は意義があったが,時間の制約もあり,それ以上,議論を深められなかったのは,残念であった。しかし,アメリカには,JSLの子どものように,英語を第二言語として学ぶ子どもが500万人いるという現実は,このパネルセッションのテーマがグローバルな課題であることを,改めて,参加者に実感させた。

このような「移動する子どもたち」の現実は,次の点とも関連する。

今回の学会の研究発表で目立ったのは,初等中等教育レベルの「継承語としての日本語教育」である。それは,アメリカに居住する日系人3世や4世という意味よりも,1980年代以降,アメリカに渡った日本人の増加にともない,それらの家族の子どもたちへの日本語教育をどうするかが,近年のアメリカの「日本人社会」の大きな関心事になっていることと関連する。また,今回の学会に初等中等教育レベルの日本語教育に関係する研究や参加者が多く合流できたのは,そのような現実が「移民の子どもたちへの教育」というアメリカ全体の課題と密接に関連していることを如実に語っていた。

いずれにせよ,「移動する子どもたち」への教育,特に言語教育の課題は,グローバル社会の避けて通れない課題である。この言語教育については,来年2月,早稲田大学で行なう国際研究集会「「移動する子どもたち」の言語教育」でさらに深めていきたい。そのような思いと決意を強く抱かせたパネルセッションであった。

(川上郁雄)