書評『私も「移動する子ども」だった』
「移動する子ども」の母として思うこと
吉冨ゆかり(スイス:ルツェルン在住,子育てママ)
この本を読んでまず感じたのは,自分がカウンセリングを受けているような気持ちになったことです。そして現在自分が置かれている環境や問題意識を再認識したような気がしました。というのも,対談者の多かれ少なかれ持っている心の葛藤や孤独感などの悩みが,子どもだけではなくその両親にも共通するテーマだと感じたからです。
私はスイスで娘を出産し,子育てしています。夫も日本人です。普段の生活で母国語と現地語を使い分けるのは,子どもよりも私たち大人のほうが最初にぶつかる問題で,今もそれはかわりませんが,この本にも書かれていたように,大切なことは言語能力よりも気持ちが通じ合うことで,個人差はあるでしょうが,問題意識がちゃんとあれば子どもの言語能力は発達するし,いい人間関係が築かれて自信がつくのではないかということです。何ヶ国語も堪能にあやつれるのは確かに理想ですが,この本から私が学んだのは言語能力に完璧さを求めてはいけないということです。
子どもだからなんでもすぐ吸収して消化する・・・と思いがちなところを,この本からそうではないことを学びました。子どもだから,大人だから,国籍だからではなく,同じ人間として共通なテーマがたくさんありました。もう少し子どもが大きくなったら彼女にも是非読んでもらって感想を聞いてみたいです。親の立場としても大変気づきの多い本でした。また続編も読みたいです。
『私も「移動する子ども」だった ― 異なる言語の間で育った子どもたちのライフストーリー』- 川上郁雄(編,著)
- 2010年5月10日,くろしお出版より刊 [紹介ページ]
- 定価:1,470円 [amazon.co.jpで購入する]
- 目次
- はじめに 「移動する子ども」とはどんな子どもか[抜粋 >]
- 第一部 幼少の頃,日本国外で暮らし,日本に来た「移動する子どもたち」
- セインカミュ(マルチ・タレント) 「外人」と呼ばれて,外人訛りのない日本語で返そうと思った
- 一青妙(女優・歯科医師) 台湾で中国語を話し,自分は台湾人と思っていた
- 華恵(作家) ニューヨークで英語の本を読みふけっていた
- 白倉キッサダー(社会人野球選手) 長野に着いたとき,「タイ語,禁止」と言われた
- ,6.響彬斗&響一真(大衆演芸一座) ブラジルで日本舞踊,和太鼓,三味線,歌を習っていた
- 第二部 幼少の頃から日本で暮らし,複数の言語の中で成長した「移動する子どもたち」
- コウケンテツ(料理研究家) 大阪で生まれ,大人が韓国語交じりの日本語を話すのを不思議に思った
- フィフィ(タレント) 名古屋で育ち,アラビア語を話さなくなった
- 長谷川アーリアジャスール(プロサッカー選手) 埼玉で生まれ,イラン語を「使えないハーフ」と語った
- NAM(音楽家・ラッパー) 神戸で生まれ,「ベトナム語は話さんといて」と親に言った
- 終章 「移動する子ども」だった大人たちからのメッセージ
- あとがき
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