書評『私も「移動する子ども」だった』

コミュニケーションの本質を学べる「新しくて具体的な手引書」

柴田俊明(伊藤忠記念財団)

「多言語,多文化の中で育った経験」を持つ10名のライフストーリーから得るものは多い。次々と,新しい国で新しい社会に適応していく運命を背負ってきた彼らは,まず自ら壁を取り払い,滞在する社会で習いたての現地語を駆使してコミュニケーションを図り,仲間と共感し豊かな人間関係を育んできたのだ。

単一言語,同一文化の中で育つ宿命をもつ私達が,「移動する子どもたちの生きざま」から学ぶ点は多いはずだ。海外赴任や海外留学に対してとても消極的であると言われている日本の若者像も頭に浮かんでくる。私達は今,コミュニケーションの本質を学べる「新しくて具体的な手引書」を手に入れたと言えよう。

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表紙『私も「移動する子ども」だった』『私も「移動する子ども」だった――異なる言語の間で育った子どもたちのライフストーリー』

  • 川上郁雄(編,著)
  • 2010年5月10日,くろしお出版より刊 [紹介ページ
  • 定価:1,470円