書評『私も「移動する子ども」だった』

いつか自分探しを始める息子にこの本を

木下直子(明海大学総合教育センター)

今月1歳9カ月になる息子はニュージーランドと日本の2つの国籍,2つの名前を持っています。息子は生まれてから今まで,ニュージーランドの祖父母や家族には「どう見てもアジア人の顔だ」と,日本の祖父母や多くの日本の友人達には「本当にお父さんの顔にそっくりだ」と言われ,どちらの側にとっても「自分達の顔ではない」と言われています。このような環境にいる息子が自分のアイデンティティーに悩む日は,近い将来,必ず来るはずです。

この本を読んで,息子が自分探しを始める頃にぜひこの本を紹介したいと思いました。セイン カミュさんの場合,アイデンティティーに悩んだ時に「面白いバックグラウンド持ってから,それ,何か,うらやましいよ」(p.30)と,自分の生い立ちの素晴らしさを友人が気づかせてくれます。息子にもいつかそのような友人に出会えればいいですが,たとえ会えなくてもこの本が気づかせてくれるのではないかと思うのです。この本を読んで,息子もきっとこの10人の方々の存在を心強く感じ,肯定的に自身の人生を捉えてくれるのではないかと期待しています。少なくとも私は10人の方々の存在を心強く感じ,母親としてあるべき姿を見つけられたような気がしております。

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表紙『私も「移動する子ども」だった』『私も「移動する子ども」だった ― 異なる言語の間で育った子どもたちのライフストーリー』
川上郁雄(編,著)
2010年5月10日,くろしお出版より刊 [紹介ページ
定価:1,470円 [amazon.co.jpで購入する
目次
  • はじめに 「移動する子ども」とはどんな子どもか[抜粋 >
  • 第一部 幼少の頃,日本国外で暮らし,日本に来た「移動する子どもたち」
    1. セインカミュ(マルチ・タレント) 「外人」と呼ばれて,外人訛りのない日本語で返そうと思った
    2. 一青妙(女優・歯科医師) 台湾で中国語を話し,自分は台湾人と思っていた
    3. 華恵(作家) ニューヨークで英語の本を読みふけっていた
    4. 白倉キッサダー(社会人野球選手) 長野に着いたとき,「タイ語,禁止」と言われた
    5. ,6.響彬斗&響一真(大衆演芸一座) ブラジルで日本舞踊,和太鼓,三味線,歌を習っていた
  • 第二部 幼少の頃から日本で暮らし,複数の言語の中で成長した「移動する子どもたち」
    1. コウケンテツ(料理研究家) 大阪で生まれ,大人が韓国語交じりの日本語を話すのを不思議に思った
    2. フィフィ(タレント) 名古屋で育ち,アラビア語を話さなくなった
    3. 長谷川アーリアジャスール(プロサッカー選手) 埼玉で生まれ,イラン語を「使えないハーフ」と語った
    4. NAM(音楽家・ラッパー) 神戸で生まれ,「ベトナム語は話さんといて」と親に言った
  • 終章 「移動する子ども」だった大人たちからのメッセージ
  • あとがき
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