書評『私も「移動する子ども」だった』

“移動する子どもだった”皆さんのたくましさに魅せられました

稲葉 美穂(オーストラリア,モナシュ大学博士課程院生)

読み始めたら,とても面白く,一気に読みました。時には感心し,時には笑い,そして感動しました。日本語教育に携わる者として,この本に登場するみなさんの環境と言語習得の話はとても興味深く,そして一人の人間として,みなさんの強さやたくましさをうらやましくも思いました(それは,皆さんが葛藤や迷いなどを経たからこそのものだと思いますが)。そして,先生が書かれているように,移動する子どもたちは,様々な視点で世界を見られるようになる大きな可能性があるというのを,皆さんのエピソードから実感しました。

また,この本を読みながら,オーストラリアで出会った学生たちのことを何度も思い浮かべました。私が教えた学生にも移民二世や小さい頃にオーストラリアに移住した人が多く,彼らは英語がベースにありながらも,自分のルーツになる言語と,みんな様々な関わり方をしているようでした(移民背景の学生だからこそ,他の外国語にも興味を持つのかもしれませんね)。この本を読んで,彼らのことを理解するヒントをもらいました。そして,もっと彼らのことを知りたいと,今,思っています。

最近,“何のために日本語教育に携わっているんだろう”と少なからず疑問を持っていた私でしたが,この本を読んで,“やっぱり日本語教育の世界に入ってよかった,もっと知りたいことがいっぱいある”と私の中の好奇心がまたむくむくと膨れ上がってきました。その意味でも,本当にこの本を読むことができてよかったです。ありがとうございました。

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表紙『私も「移動する子ども」だった』『私も「移動する子ども」だった ― 異なる言語の間で育った子どもたちのライフストーリー』
川上郁雄(編,著)
2010年5月10日,くろしお出版より刊 [紹介ページ
定価:1,470円 [amazon.co.jpで購入する
目次
  • はじめに 「移動する子ども」とはどんな子どもか[抜粋 >
  • 第一部 幼少の頃,日本国外で暮らし,日本に来た「移動する子どもたち」
    1. セインカミュ(マルチ・タレント) 「外人」と呼ばれて,外人訛りのない日本語で返そうと思った
    2. 一青妙(女優・歯科医師) 台湾で中国語を話し,自分は台湾人と思っていた
    3. 華恵(作家) ニューヨークで英語の本を読みふけっていた
    4. 白倉キッサダー(社会人野球選手) 長野に着いたとき,「タイ語,禁止」と言われた
    5. ,6.響彬斗&響一真(大衆演芸一座) ブラジルで日本舞踊,和太鼓,三味線,歌を習っていた
  • 第二部 幼少の頃から日本で暮らし,複数の言語の中で成長した「移動する子どもたち」
    1. コウケンテツ(料理研究家) 大阪で生まれ,大人が韓国語交じりの日本語を話すのを不思議に思った
    2. フィフィ(タレント) 名古屋で育ち,アラビア語を話さなくなった
    3. 長谷川アーリアジャスール(プロサッカー選手) 埼玉で生まれ,イラン語を「使えないハーフ」と語った
    4. NAM(音楽家・ラッパー) 神戸で生まれ,「ベトナム語は話さんといて」と親に言った
  • 終章 「移動する子ども」だった大人たちからのメッセージ
  • あとがき
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