「JSLバンドスケール」Q & A
Q1. JSLって何ですか。
JSLはJapanese as a Second Language(第二言語としての日本語)のことです。
英語圏の移民への英語教育,ESL(English as a Second Language:第二言語としての英語)と同様の考え方で作られた言葉です。文部科学省が開発した「JSLカリキュラム」のJSLも同じ意味ですが,「JSLカリキュラム」のためにJSLバンドスケールが開発されたわけではありません。両者はまったく別ものですが,第二言語としての日本語を学んでいる子どもたちのために開発されている点は同じでしょう。
Q2. バンドスケールって何ですか。
バンドスケール(Bandscales)は「目盛りの束」「ものさしの束」という意味です。
このバンドスケールは言語習得の発達の様子を測るために作成されました。スケールは「秤」「ものさし」といった意味で,バンドはそれを「束ねたもの」という意味です。このバンドスケールという言葉はオーストラリアのESL教育で使用されています。JSLバンドスケールもオーストラリアの教育実践にもとづき開発されています。英語のScalesは複数形になっていますが,日本語に翻訳するとき外来語の翻訳例にしたがい,スケールズとはしませんでした。しかし,内容は90以上の目盛りの束ということです。
まずは,紹介パンフレット(ダウンロード [PDF:45KB])をご覧下さい。
Q3. JSLバンドスケールは到達目標になりますか。
いいえ,到達目標にはなりません。
各レベルの記述内容は,そのレベルに該当する子どもたちの言語使用(第一言語も第二言語も)の様子や,ストラテジー(方略)などの情報が記述されています。その特徴と照らし合わせて,子どもたちの言語発達の様子を観察してレベルを確定してください。次のレベルを目標値として子どもを指導する必要はありません。身長測定器が2メートルまで測定可能であっても,こどもに2メートルまで伸びなさいと指導しないのと同じです。
Q4. JSLバンドスケールの各レベルの事項を点数化することはできますか。
いいえ,点数化することはできません。
このJSLバンドスケールは子どもの言語発達の様子を把握するために細かい記述内容になっていますが,各項目を点数化して,子どもの言語能力を点数で示すことをめざしているわけではありません。点数化すると言語能力の全体的な把握ができなくなると考えます。なぜなら,言語は動態的なものだからです。
Q5. JSLバンドスケールは日本語指導担当者の評価に使えますか。
いいえ,使えません。
このJSLバンドスケールは子どもの言語発達の様子を把握し,どのように指導するかを考えるために考案されたものです。このJSLバンドスケールを,日本語指導者の指導能力を評価するために使用することは「正しい使い方」ではありません。
Q6. JSLバンドスケールのどのレベルが文部科学省の「調査項目」に相当しますか。
両者はまったく別物です。両者を併用することはできません。
JSLバンドスケールは,文部科学省が毎年行なっている「日本語指導が必要な外国人児童生徒の受入れ状況等に関する調査」で使用されるカテゴリー(「日常会話に支障あり」「教科指導に支障あり」など)とはまったく違います。両者を結びつけて考えることはできません。そのような使用の仕方も「正しい使い方」ではありません。
Q7. どのレベルの児童生徒なら,「取り出し指導」をやめて在籍クラスへかえすことができますか。
それは子どもの様子などによって異なりますので,どのレベルからとは言えません。
できるだけ早く在籍クラスへもかえし,他の子どもたちと一緒に学ぶことが大切です。しかし,初期指導や子どもの言語発達によっては,「取り出し指導」を行い,集中的な指導や特別に配慮された指導をすることも大切です。したがって,どのレベルで在籍クラスにかえすことができるかは,それぞれのケースで異なります。また,レベル7まで「取り出し指導」をする必要もありません。このJSLバンドスケールは,日本語指導担当者と在籍クラスの担任など関係する指導者の間で,当該の子どもの言語発達の様子について共通理解をもって,どのような指導をしたらよいかを考えていくために開発されているのです。
お願い
このJSLバンドスケールは試行的なものです。使っていただいた方々からのご質問やご指摘を受けて,さらによいものに改良していきたいと思いますので,どのようなことでも,お気づきのことや疑問など,お知らせください。よろしくお願い致します。
年少者日本語教育研究室・川上郁雄 kawakami@waseda.jp