英国見聞録

浅井涼子(研究内容紹介

第1回 「井の中の蛙,大海に飛び込む」[2007-11-04]

ブリティシュカウンシルの日本語指導助手派遣プログラムに参加し,10月から英国のSlough Grammar Schoolで働いています。このプログラムに関しては,昨年度参加していた北見さんのブログでご存知の方もいらっしゃるかと思います。私が滞在しているSloughという町は,ロンドンから1時間ほど,有名なイートン校やウィンザー城へは歩いて行けるほどの所にあります。ここでの滞在期間は8か月。こちらへ来て,ちょうど1か月が過ぎたところです。

この「英国見聞録」では,私が滞英中に体験したこと,感じたことなどを綴っていきます。第1回目は,私が日本語指導助手派遣プログラムに応募した動機と心持ちについて書きたいと思います。

Slough Grammar Schoolこの1か月は,本当にあっという間でしたが,いろいろなことがありすぎて,随分時間が経っているような気もします。何しろ,今回の渡英が私にとって初めての海外なのです。そういうわけで,私の渡英準備はパスポートを作ることから始まりました。

初めての渡航が長期,それも現地で働くとなると,不安も少なくありませんでしたが,そんな不安に勝る魅力がこのプログラムにはありました。もちろん,英国で年少者日本語教育に携われることもその一つですが,それだけではありません。

私が数年来ずっと関心を持ち,これからも関わっていきたいと思う日本語教育は,外でもなく,「外国人」に日本語を教える仕事です。日本(語)を客観的に捉えることが求められるため,国内のみに留まっていたら,気付かないこともあるでしょう。滞英期間中は,外から日本のことを見つめ,新たな日本の側面に気付ければと思います。

また,国内では「外国人」といくら対等に向き合おうとしても,私は「マジョリティー」で,彼らは「マイノリティー」です。彼らの立場に立って考えようとしても,「マイノリティー」になった経験がなければ気付けないこともあるでしょう。そういうわけで,海外経験が無いことが私のコンプレックスでした。幸か不幸か,Slough Grammar Schoolには,私の他に日本人スタッフはいません。ここでは,私は「マイノリティー」です。異なる文化の中で,母語ではない言語を使って生活するということがどういうことなのか,ようやく今,身をもって体験しています。

余談になりますが,英国に来てから,背伸びをすることが少なくなったような気がします。150センチ足らずの私が背伸びをしても,届かないものは届かないからです。例えば,鏡の前で背伸びをしても,額しか見えないことがよくあります。いろいろな意味で,自分の小ささ,今まで自分が知らなかった世界の広さ,大きさを再確認しています。8か月間という決して長くはない期間ですが,たくさんのことに出会い,井蛙の見を少しでも広げたいと思います。この先,どんなことが私を待っているのか楽しみです。

浅井 涼子(2007/11/4)

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