新着情報――川上郁雄研究室

お知らせ

【参加者募集:1月29日】「移動とことば」研究会 第1回研究会

開催要領

主な内容
  • 研究発表
  • パネルセッション: 「移動とことば」を考える――ことば・アイデンティティ・ライフ
    • 三宅和子(東洋大学)・岩崎典子(ロンドン大学SOAS)・川上郁雄(早稲田大学)
  • 映画:「生まれつき(Born with it)」(2015年,監督:Emmanuel Osei-Kuffour Jr.)

詳しくは,プログラム[PDF]をご覧ください。

開催趣旨

クリフォード(2002)は,誰もが,いま,移動していると述べ,移動が未完の近代にとって決定的に重要な場所であると指摘した。人間の生活が静止と同じくらいの転地(displacement)によって構築されるという意味である。「旅の中に住まう」(dwelling in travel)と表現するクリフォードの捉える生活実践は,現代の人々の生活,社会のあり方を考えるうえで極めて示唆的である。

また,言語は,バフチン(1980)が述べるように,「絶えざる生成の過程」であり,「語り手・聴き手の言葉による社会的な相互作用」という形をとって実現される過程であると捉えるなら,言語は極めて動的なものと考えられる。加えて,コストら(2011)が指摘するように,現代に生きる人々は誰もが幼少期より言語と文化の複数性と融合性に日常的に触れる経験を積んでおり,その経験がベースとなった複言語複文化能力は複雑で不均質だが全体としてひとつのものとなって人を形づくっていると考えると,人を支える力も複合的で,動的なものと考えられる。

多様な背景を持つ人々の日常的実践である言語行動自体を,複言語複文化能力の戦略的なコミュニケーション方略とあわせて考察する,近年の社会言語学の新しい潮流を踏まえると,人の生活を国籍やエスニシティで捉えられない現実があることがわかる。そして,移動の中に生き,「複数言語」と接触する現実は,人の人生,家族の形,子どもの教育などに流動性と複合性を与え,人のあり様を加速度的に多様化している。

本研究会は,そのような現実を生きる人々の生活を,「移動」と「ことば」という二つの焦点で捉えるバイフォーカル(bifocal)なアプローチから,移動性,複文化性,複言語性を持つ人のあり方を考察することが21世紀の社会的課題であると考える。考察の対象は,子どもから大人まで,国籍・国家の枠を超えて設定する。既存の学問領域を超えた視点からの多様な研究交流の場として,研究会を立ち上げた。その第1回研究会を,以下の日時で開催する。多くの研究発表を募る。

参考文献
  • クリフォード,J.(2002).毛利嘉孝,他(訳)『ルーツ――20世紀後期の旅と翻訳』月曜社.
  • コスト,D.,ムーア,D.,ザラト,G.(2011).複言語複文化能力とは何か.姫田麻利子(訳)『大東文化大学紀要人文科学編』49,249-268.
  • バフチン,M.(1980).『ミハイル・バフチン著作集4 言語と文化の記号論』新時代社.

研究会の主催と研究成果の刊行

本研究会は川上郁雄(早稲田大学),三宅和子(東洋大学),岩崎典子(ロンドン大学SOAS)が主催する研究会である。この3人が査読編集委員を兼ねる。研究会は今後,3回実施する予定。その中から優れた研究成果を選び,3人の編者による書籍化を行う。

川上郁雄の最近の仕事より

論文

学会発表

  • 三宅和子,川上郁雄,岩崎典子(2015年08月).「複合言語環境に生きる人々の『言語使用,日本語学習』の意味とアイデンティティ」第19回ヨーロッパ日本語教育シンポジウム(フランス:ボルドーモンテーニュ大学).
  • 川上郁雄(2014年8月30日).「『移動する子ども』の複言語・複文化そしてアイデンティティを考える」.三宅和子,岩崎典子,川上郁雄〈パネルセッション〉「複言語使用者は日本語・日本をどのように捉え,どのように向き合っているのか」第18回ヨーロッパ日本語教育シンポジウム(スロベニア:リュブリャーナ大学).
  • 川上郁雄(2014年8月9日).「『ことばの教育』を創造する『教育支援システム』の構築――三重県鈴鹿市における教育委員会,学校,大学の連携をもとに」〈多文化系学会連携協議会企画・特別研究発表〉異文化間教育学会第29回研究大会(仙台大学)〈『要旨集』p. 20〉.
  • 川上郁雄,中村栄子,西村パーク葉子(2014年7月11日).「『移動する子ども』のことばの教育を考える――オーストラリアで成長する子どもたちへの日本語教育実践から」シドニー日本語教育国際研究大会/Sydney-ICJLE2014(シドニー工科大学).
  • 川上郁雄,野山広,石井恵理子,池上摩希子,齋藤ひろみ(2014年5月31日).「『特別の教育課程』化は子どもたちのことばの教育に何をもたらすのか――年少者日本語教育のこれまでの成果と教育実践から考える」2014年度日本語教育学会春季大会(創価大学)〈『予稿集』pp. 35-46〉.

講演

  • 川上郁雄(2014年12月6日).「日本語教育と『移動するこどもたち』」朝日カルチャーセンター講演会(新宿:朝日カルチャーセンター).
  • 写真川上郁雄(2014年8月16日).「日本語を学ぶ子どもたちにとって意味のある言語活動とはなにか」ウズベキスタン日本語教師会(主催)ウズベキスタン日本語教育セミナー(ウズベキスタン日本人材開発センター).

集中講義

  • 川上郁雄(2014年8月5日~8日).「移動の人類学」(授業科目:文化人類学各論)東北大学文学部・文学研究科.

書評

  • 川上郁雄(2014年9月19日).書評「台南ブームと顔妙さん――複言語への思い,記憶,そして家族の絆(一青妙(著)(2014)『わたしの台南――「ほんとうの台湾」に出会う旅』新潮社刊.).『ルビュ「言語文化教育」』509.http://archive.mag2.com/79505/20140920141931000.html

研修会

  • 川上郁雄(2015年10月24日).「「子どもの状況に合わせた指導法――事例を考える」千葉市JSL児童・生徒支援の会平成27年度第3回研修会(千葉市国際交流協会).[チラシ:PDF
  • 川上郁雄(2014年6月29日).「JSLバンドスケール・ワークショップ――児童生徒のことばの力をどう把握し,実践をデザインするか」日本語教育学会2014年度日本語教師研修(早稲田大学).

【新刊】『日本に住む多文化の子どもと教育――ことばと文化のはざまで生きる』宮崎幸江(編)

川上郁雄:第5章「ことばとアイデンティティ――複数言語環境で成長する子どもたちの生を考える」ほか

表紙川上の執筆による第5章は,昨2013年5月の日本語教育学会春季大会で口頭発表した内容をまとめたもの。「移動する子ども」から「移動する家族」へと展開した記念碑的論文。

  • 川上担当箇所
    • 第5章「ことばとアイデンティティ――複数言語環境で成長する子どもたちの生を考える」
    • Column:「ベトナム難民」二世を,私たちはいつまで「ベトナム人の子ども」と呼ぶのだろうか
    • 第3部:対談「多文化の子どものことばとアイデンティティ」
  • 内容紹介(ぎょうせい)
  • SUP上智大学出版より2014年1月6日刊

【新刊】尾関史(著)
『子どもたちはいつ日本語を学ぶのか――複数言語環境を生きる子どもへの教育』

複数の言語や文化の中で育つ子どもたちは,複数のことばをどのように捉え,どのように学ぶのか。そして,その過程でどのようなアイデンティティを形成しながら成長していくのか。

本書ではこれらの問いに答えつつ,複数言語環境を生きる子どもたちへの「ことばの教育」を再考する。

前半では,ある外国籍の子どもに対する日本語教育実践と帰国後の学びを,約1年半にわたるフィールドワークを通して捉える。後半では,複数言語環境で育ってきた4人の若者たちにライフストーリーインタビューを行い,幼少期の経験がその後の言語習得や人間形成,アイデンティティ形成にどのような影響を与えているのかを探る。

尾関史さんの研究紹介 >

【新刊】
다락원일본어독해(タラグォン日本語読解)』シリーズ(다락원 刊)

  • 古賀万紀子,青木優子(著)
  • 表紙다락원일본어독해 중급(タラグォン日本語読解 中級)』
  • 다락원일본어독해 초급(タラグォン日本語読解 初級)』
  • 다락원일본어독해 초급에서 중급으로(タラグォン日本語読解 初級から中級へ)』
  • 다락원による紹介

初級・初中級・中級段階の学習者を対象とした総合型読解教科書です。本教科書では,読むことに加え,本文の中で新しい文型や語彙を学び,書く練習や聞く練習を通してそれを身につけることを目指しています。

各課のトピックは,身近なものから社会問題まで,学習者の関心を引く幅広いテーマを取り入れました。授業の目的やカリキュラムに合わせて,どの課からでも始められます。

課の構成は,導入部・本文・読解問題・本文中の単語や表現の一覧・文型練習・文法練習問題・聴解問題となっています。文型説明や単語説明には韓国語での説明や対訳が付いていますから,それを参考にしながら問題に取り組むことができます。また,難しい漢字には読み仮名が付いていますが,文字の下にルビを振っているので,それを隠しながら読むことで,漢字の練習もできます。

楽しみながら学習することができるよう,さまざまな工夫が詰まった教科書です。

青木裕子