サイレント・ウェイ式仮名導入表

「サイレント・ウェイ式仮名導入表」作成の背景

早稲田大学大学院日本語教育研究科 川口義一

「サイレント・ウェイ式仮名導入表」作成の理由

サイレント・ウェイ式仮名導入表現在,市販の仮名の五十音表は,ひらがなとカタカナが同じ作り方になっています。しかし,カタカタは,もともと「外来音を表す」という重要な機能があり,そのためにひらがなと違う表記法が発達しています。たとえば,ひらがなにはない長音記号の「―」とか「グァ」「ティ」「トゥ」「ジェ」「フォ」「ウィ」などの表記です。にもかかわらず,市販の五十音表では,表の構成が同じなので,カタカナの指導が不十分になるという認識が,日本語教師の間にあります。また,ひらがなの五十音表でも「とけい」のように「エで発音するイ」,「こうこう」のように「オで発音するウ」,「促音」のための小さいツの表記は,表の中からは直接指導できません。このような発音と表記に関する指導のやりにくさを解消するために,この新しい「仮名指導表」[ダウンロード:PDF]を作ったというわけです。

「サイレント・ウェイ」について

「サイレント・ウェイ(The Silent Way)は,アメリカの数学者で心理学者でもあるカレブ・ガッテーニョ(Caleb Gattegno)が開発した母語(識字教育)と外国語の教授法です。その特徴は,「教授は学習に従属する」という理念が示すとおり,教師は直接教えるのではなく,学習者が学ぶ力を発揮できるように,教材と教える手順を整えるというところにあります。特に,入門機の発音と表記を教える場合に教師が発音の手本を示して学習者にまねさせる方法をとらないということが有名です。この理念と方法は,仮名文字の発音と表記を教えるときに適しているため,これを応用して「仮名導入表」を作りました。

「仮名導入表」の使い方の注意点

この表を使うときは,教師が発音の手本を示さずに,学習者に試行錯誤させて発音を引き出します。また,一つ一つの音を完全に発音できるまで繰り返させるのではなく,とにかく表から作り出せる音を全体的に把握させ,少しずつ復習しながら進んでいくようにしてください。その間,教師のほうは学習者のわかる言語でヒントを与えたり,指示を出したりすることはかまいません。また,発音が分かってきたら,できるだけ早いうちから単語や短い文を作らせ,表記と発音を結び付けるようにしてください。この表では,ポインターで文字を示しながら発音させるので,促音や撥音も一拍として数えられ,日本語のリズムが覚えやすいことも意識させてください。教師から指示して発音させたり,書かせたりするだけでなく,学習者にポインターを渡して,自分の知っていることばを指してクラス全体に読ませたり,学習者をグループにして表のコピーを渡し,すべての文字を使ってことばを書かせて競争させたりするような活動もできます。工夫して,いろいろなクラス活動を作ってみてください。

(なお,詳細は,別途作成の「サイレント・ウェイ式仮名導入表」使用解説[PDF]をご参照ください)