大会趣旨
国際研究集会開催に向けて――趣旨説明
近年,国際化とグローバリゼーションの影響の中,人口の大量移動現象が世界各地で見られます。それは大人の移動だけではなく,子どもの移動も意味します。その結果,各国でその国のことばを第二言語として学ぶ子どもたちの教育の問題が顕在化してきています。
日本もその例外ではなく,「第二言語としての日本語」(Japanese as a Second Language:JSL)を学ぶ子どもが全国的に増加しており,学校現場の重要な課題となっています。また地域においては「不就学」と呼ばれる学校へ行かない子どもも出てきており,社会問題化しています。
これらの問題の研究と教育実践を行うことをめざして,私たちは2003年「年少者日本語教育学を考える会」を立ち上げ,日本語教育学会(2004年度,2005年度,2006年度)および日本語教育国際大会(2006年度:New York)で研究パネルセッションを4回,さらに東京で研究集会を5回実施し,研究と実践を重ねてきました。
JSLの子どもたちの教育は,諸外国の「第二言語としての英語」(English as a Second Language:ESL)を学ぶ子どもたちの教育と共通する点が多く見られます。その中でも,オーストラリアは「移民国家」であると同時に,National Policy on Languages(Lo Bianco,1987)およびAustralian Language Levels Guidelines(Scarino, Vale, McKay & Clark,1988)以後,国家的規模で言語教育が推進されている国としてよく知られています。私たちはこれまでオーストラリアの言語政策や言語教育について,現地での調査も踏まえ,研究を重ねてきました。その結果,オーストラリアのESL教育に深く関わる有力な研究者,実践者を招聘し,オーストラリアのESL教育に関する研究成果と日本各地で行われているJSL教育に関する実践研究の成果とを合わせて,「移動する子どもたち」の言語教育について研究協議を行うことは,教育的にも社会的にも重要な意義があると判断し,この国際研究集会を企画しました。
シンポジウムのテーマとなっている「『移動する子どもたち』へのことばの教育をどう構築するか――言語教育の方法論と教育実践」および「『移動する子どもたち』のことばの力をどう捉え,どう発展させるか」は研究集会全体にかかわる中心的なテーマです。これらのテーマをめぐり,多くの参加者とともに研究協議を行い,その成果を公開することによって,21世紀に増加することが予想される「移動する子どもたち」のことばの学習を支える教育の実現へ向けたビジョンを示し,オーストラリアと日本だけではなく,諸外国にも貢献することを切に願っています。
年少者日本語教育学を考える会
年少者言語教育国際研究集会実行委員会